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一応予約されていたディナーを楽しみ、店に帰る途中でめめが立ち止まった。
「返事、聞いてないんだけど」
「いや好きって言っただけやろ。俺にはラウがおるから」
逃げた。ラウが想いを向けているのはめめの方。
うっすらとでもそれが分かっているめめは、とりあえず笑った、みたいな顔。
「でも、蓮って呼ぶわ」
「それは普通に嬉しい」
さっきの表情とは打って変わって、目を細めて喜ぶめめ。
この素直さに救われたからには、周りの年上たちを素直にさせて、俺らは3人で仲良くやっていけるようにせんとな。
「「ただいま〜」」
「おかえりなさい!」
余ったスペースに作ったイートイン用の机で勉強していたラウがパッと駆け寄ってくる。
もうラウを待たせてる時点でお泊りは無かったってこと。正直に白状すると、背水の陣。
「置いてけぼりにしてごめんなぁ」
「全然大丈夫です。寂しかったけど」
「ほんまごめん!!」
数時間前の俺、どういう神経してたん?自分勝手すぎて引くわ。
「これからめめほっといてラウ最優先に考えるからな!」
「めめじゃなくて?」
「話をややこしくせんとって」
「向井さんも目黒さんも楽しそうで良かったです」
「ちゃうちゃう!!誤解やって!」
過程は伏せて呼び捨てのことを話し、ラウも「蓮くん」「康二くん」と呼ぶということで落ち着いた。
それなのに、ラウを置き去りにした罪悪感で口が余計に回る。
「そーいえば照兄、ふっかさん下の名前で呼ばんよな」
「あ、確かに」
「康二くん俺にその話地雷」
暗い顔で言うラウは本当に悲しそうで、大げさに謝って笑って流す…みたいなことはできなかった。
「俺、何もできないんだよ。大事な人たちが困ってても」
「いやいや、ラウはおるだけで安らぐから」
「2人で何しに行ってたか隠すくせにそんなこと言わないで」
叩きつけられた言葉の衝撃は、鈍すぎた俺らを黙らせるには十分だった。
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作者名:べす | 作成日時:2021年3月31日 16時