捨てる神あれば拾う神あり [absk] ページ27
近づくきっかけになったアニメの原作小説の背表紙に見守られ、あくまで仕事として連絡先を尋ねる。
「では、お取り寄せできた際のご連絡はどうしましょう?」
「とりあえず電話で、あれ、番号何だっけ」
小さく唸りながら眉間にしわを寄せた次の瞬間。
「名刺か」
「そうみたいですね」
彼の表情同様、コロコロ変わる展開についていけない俺の妙なあいづちはスルーで、カバンに手を突っ込んでケースを引き当てた。
お休みの日も持ち歩いているのかと感心したけれど、単にこういう時のためかもしれない。
ケースを下敷きにして何やら書き足している、きゅっと力の入った口元を見つめていると、遠くから呼ばれた。
それに勢いよく顔を上げた彼と真正面から目が合う。
切ないことに、交わった視線はすぐ逸らされた。
「どうぞっ!」
やや上ずった声と共に差し出された名刺。
その裏に、トークアプリのIDと『語りませんか』というメッセージがあったことには気づかないフリ。
彼、名刺によると佐久間さん、が去った後、じんわりとした頭痛が引いたのも、きっと気のせい。
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作者名:べす | 作成日時:2021年3月31日 16時