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「まーそんな悲しい顔しなくても、俺はガチムチひーくん推しですよっと」
「してねぇよ」
定位置である俺の右側の席に腰を下ろしてニヤつくこいつと、夫婦。
ありえないってことは無い。
え、俺、今ありえるって思った?
いい奴だと思ってるのは事実。
それに、調子のいいことはポンポン言う癖に、弱音や相談事は一切口にしないふっかを気にかける回数は増えてきている。
まぁ、一度もその弱音とかを察せたことはない。
この前だってそう。
「俺、Ωなのにめっちゃここの人に愛されてね?オーナーも俺のこと好きだったらワンチャン玉の輿あるわ」
とか言って他のΩへの嫌がらせを止めていた。
たとえ、代わりにターゲットが自分になろうと。
嫌がらせ自体は、タオルを別のところに置く程度だった。
だからこそ、釈然としない。
口の上手いふっかなら、もっと良い治め方もできたはず。
第一、あの発言が誰かを庇ってのものだと俺が知るのは、標的が移ってから。
「照、タオル貸して」
「ペットボトルどこ置いたか忘れちった」
頼られて、舞い上がって、結局本人から話を聞くまで気づかなかった。
彼が隣にいることに慣れて、顔を見ることを忘れていた。
1人で全部やろうとして、今のところ全てが上手くいっているからこそ危ない。
しっかり証拠を集めて、嫌がらせをしていた連中に然るべき処分が下されたとき、そう思った。
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作者名:べす | 作成日時:2021年3月31日 16時