magnetic relations [dtnb] ページ13
何よりも大切な幼馴染と引き離され、永遠に感じた青春時代。
あまりに一人で生きていたせいで、亮平や照にまで「舘さん」と呼ばれ、少し寂しい。
唯一下の名前で呼んでくれるのが、翔太。
生まれた病院も、育った施設も、途中までは一緒だった。
理由の説明も、別れの言葉もなく、突然会えなくなった幼馴染を恋しく思うのはあたりまえだろう。
しばらくは、亮平も照も翔太の話題を一切出さなかったから。
αは世の中で一番活躍できる性。
そんな古い観念を捨てきれない施設では、早々に進路を決めて各々がその道を究める。
必然的に重要な役職はαがさらうことになり、それに抗おうと頑張っているところもあるらしい。
そんなこんなで、照はジムのトレーナー、亮平は教師の道へ。
きっと翔太はもう一度会っても変わらず手がかかるはず。
何かとお世話されていた彼との思い出を胸に、俺も2人と同じく希望する道に進むことができた。
それから色々あって、危ないお店に囲われていた翔太を平和的に引き取った。
何年振りだね、とかフルコースと夜景をお供に語るのが理想だったんだけど、仕方ない。
「てか何あの札束」
「本物は1つだけだから」
「そういう問題じゃねー」
車の中でぶつくさ言っている横顔が記憶よりもずっと精悍になっていて、平常心ではいられない。
自動運転もできる車じゃなかったら、危なかったかも。
俺の家に上がってからも口が止まらないのは事情を聞かれたくないからで、さっきからカレンダーを何回か見ていることから察するに、ヒート関連かな。
「万が一のために、抑制剤のストックはあるよ?」
「あー…うん」
まだ不安そう。
でも、翔太のヒートって書類の不備が見つかるまでΩとバレないくらい軽かったから、気にするほどではないはず。
そもそも、なんであんなところに居たんだろう。
聞き出すために家へ招いたのに、本人がこの調子。
情報も少なすぎて、カマをかけることもできない。
「翔太のタイミングで良いよ」
久しぶりに会って、話したいことは山のようにある。
それでもこう言ったのは、君が世界の中心だから。
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作者名:べす | 作成日時:2021年3月31日 16時