なぐさみ はち ページ8
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頬に手が触れる。
愛しいその肌を撫でる、触る、触れる。
貴方に触れたところが熱を帯びて、心が鈍く膿んで、褪せた心を彩る。
貴方という存在が愛しい。
愛だけでは収まらない程に。
触れるのは簡単ではない。
かといって離れることはさらに難しい。
愛しているからこそ、こんなにも苦しくなる。
愛しいから触れたくなる。
胸はもういっぱいいっぱいでこの思いはもう入らないというのに、さらに求めてしまう。
与えるだけの愛では足りないほどに。
と、貴方が目を開き微笑む。
あぁ、あぁその微笑みで。
私の世界が変わった。
こんなにも鈍く苦しく重い世界が、あっという間に、けれど丁寧に開かれてゆく。
どうか、どうか名前をお呼びすることを、許して。
「杏寿郎様ぁ…っ」
「A」
貴方に縋るように、飢えを凌ぐように抱きつく、しがみつく。
「心細かったろう。」
「ひとりにさせてしまって、すまない。」
涙が零れる。
あふれでて止まらない。
「いいんです、杏寿郎様がいれば、いいんですっ」
貴方がいないと私の生には意味がない。
あぁ、そうよ、貴方さえいればいい。
愛なんて、貰わなくたっていい。
貴方さえいれば。
貴方が生きているだけでこんなにも、嬉しいなんて。
そう、自分を騙した。
なんて、愚かなんだろう。
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いぬお(プロフ) - 伏見さん» 読んでくださりうれしいかぎりです。ボロ泣きしてくださって…照れくさいです。コメントしてくださりありがとうございます。 (2019年10月5日 13時) (レス) id: 5294fb0fb4 (このIDを非表示/違反報告)
伏見 - 素敵な小説をありがとうございました。夢小説は切ないのもたくさん読んできましたが初めてボロ泣きしました。終わりかたがとても素敵だなと思いました! (2019年10月5日 13時) (レス) id: 72fbc12c8f (このIDを非表示/違反報告)
いぬお(プロフ) - 奈南さん» 泣いたなんて…読んでくださりうれしいかぎりです。コメントしてくださりありがとうございます。 (2019年10月5日 13時) (レス) id: 5294fb0fb4 (このIDを非表示/違反報告)
奈南(プロフ) - 凄いです凄かったです。久しぶりに泣いてしまいました。素敵な小説をありがとうございました。 (2019年10月5日 12時) (レス) id: 2ded25a891 (このIDを非表示/違反報告)
いぬお(プロフ) - アルっさんさん» 読んでくださりうれしいかぎりです。はい、書こうと思っています、私に文才があればですけど…。コメントしてくださりありがとうございます。 (2019年10月4日 21時) (レス) id: 5294fb0fb4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いぬお | 作成日時:2019年9月29日 13時