慰みもの【鬼滅の刃】

杏寿郎さま ページ14

杏寿郎様へ









杏寿郎さま、私はもうだめです、駄目なのですね。



愛していました、確かに愛していました。

けれどそれを言葉にすれば怖かったのです。
嫌われそうで、嫌われそうで。


ねぇ、あのとき助けてくれましたよね。
ずっとずっと覚えていたんです。


あのときの愛しさを。
焼かれるようなこの恋心をいまでも、いまでも愛しくおもっているのです。




あのとき、抱きしめて愛していると言ってくださいましたよね。
私はあの寒い日に囚われて、殺されそうだったのよ。







ねぇ、覚えていますか。
愛を教えてくれた日を。









貴方がいないときに死ぬのは寂しくて気が引けたのです。
貴方が帰ってきたら、死ぬだなんて、貴方に看取られて亡くなるなんて、
どれほど素敵なのかしら、と、そう思って、生きようと生きようともがこうとするの
ですが、それほど私は長く生きていることができないのです。





ねぇ。

貴方は朝の早くに、夜明け前に私の枕元にいらっしゃるでしょう。
だから、見て、抱きしめてください。



これがずっとずぅっとできなかった唯一の幽かな嫌がらせなのです。





それからひとつ、とても照れくさいお願いがあります。



私が、もし、もしです。
貴方の来世にいたら、どうか、どうか私に包み隠さず本心を打ち明けてください。



貴方の素振りに少し、少しひっかかることがあったのです。


来世など、信じないと、そんな夢の無いようなことをおっしゃらないでね。


私は、酔ってなどいませんよ、素面です。




さようなら、私の愛しいひと。




私を愛していたら、これをびりびりに破いてくださいね。

少し恥ずかしいのです。






では、もういちど、さようなら。

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