なぐさみ じゅうに ページ12
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あれから寝たきりの、がらがら声のほととぎすになってしまった。
咳も血も止まらなくなった。
ただ、絶望ではなかったのは、貴方が枕元でお話しをしてくれたから。
「宇髄がある女に困っているようだ。」
「今日は冨岡がな…」
「胡蝶が、」
任務でいない時もあったけれど、それはとても面白かった。
笑い話もあって、貴方がいなくなったときにはひとりで泣いていた。
日に日に貴方が恋しくなったのだ。
「今日、鬼を連れた少年がきたのだ。竈門炭治郎といってな…」
貴方が此方を向く。
こんなにも愛しいのに。
なんでかしらね、ときめく余裕もなくなったの。
貴方の慈愛深い顔が、非常に美しく見えた。
そう、見えたのよ。
今日も貴方が枕元に座って話す。
もう、私の体力はほぼなかった。
貴方は涙を溢しながら呟くように言った。
「明日、俺は、任務だ、だから、だから、死なないでくれ、俺が、帰るまで。」
「無茶ぶりだ、俺の、無茶ぶりなんだ、今のは、今のは、、」
いつの間にか貴方は大泣きして、私の着物と頬を濡らした。
それでも、私を悲しませないようにか、笑顔を絶やさぬようにいた。
「列車の、任務だ、長いな、長いな…」
私の手を握って笑いかけるのに。
私がけほ、と咳をすると、その笑顔が消えて貴方はとうとう本当に泣いてしまった。
私が、手を握ると貴方はもう、何も言えなくなって嗚咽が部屋に響いた。
私は、なぜかしら、何故なのかしら、貴方に私のことで泣いて欲しかった。
死に顔を見てほしかった、貴方にも、後悔してほしくて。
「きょ、じゅろ、さま」
起き上がって筆をとった、
遺書を、かいた。
死は、貴方の思いでの死に方で、
部屋にゴリィと、嫌な音が響いた。
決して、私は結核で死んだわけではないの。
だからね、これは、私の最後のいやがらせの死に方なのよ。
あぁ、最後まで貴方の慰み者にはなることができなかった。
でも、もう、いいかしら。
あ、ほんとに、視界が、霞んで。
生まれ変わったら、真っ先に、貴方に、会いたいなぁ…。
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いぬお(プロフ) - 伏見さん» 読んでくださりうれしいかぎりです。ボロ泣きしてくださって…照れくさいです。コメントしてくださりありがとうございます。 (2019年10月5日 13時) (レス) id: 5294fb0fb4 (このIDを非表示/違反報告)
伏見 - 素敵な小説をありがとうございました。夢小説は切ないのもたくさん読んできましたが初めてボロ泣きしました。終わりかたがとても素敵だなと思いました! (2019年10月5日 13時) (レス) id: 72fbc12c8f (このIDを非表示/違反報告)
いぬお(プロフ) - 奈南さん» 泣いたなんて…読んでくださりうれしいかぎりです。コメントしてくださりありがとうございます。 (2019年10月5日 13時) (レス) id: 5294fb0fb4 (このIDを非表示/違反報告)
奈南(プロフ) - 凄いです凄かったです。久しぶりに泣いてしまいました。素敵な小説をありがとうございました。 (2019年10月5日 12時) (レス) id: 2ded25a891 (このIDを非表示/違反報告)
いぬお(プロフ) - アルっさんさん» 読んでくださりうれしいかぎりです。はい、書こうと思っています、私に文才があればですけど…。コメントしてくださりありがとうございます。 (2019年10月4日 21時) (レス) id: 5294fb0fb4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いぬお | 作成日時:2019年9月29日 13時