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参拾伍話 ページ38

ああ、まさか私が被害者になるとは思ってもみなかった。
こんな所で終わりか。結局何の意味もない人生だったな……。
思い残すことがないのだけが救いだな。



……


……


…あれ、全然痛みが……。


「!?!?」


不思議に思ってゆっくりと目を開けると目の前は見慣れた砂色だった。


「ッハァ、この娘に手出しはさせないよ。」


頭上から彼の声が聞こえる。何時もとは違う、低い声。鋭い眼光。

どうやら私の額に当たった液体は、彼の血液のようだった。


「だ、ざい、さん...。」


此処側から見える横顔にはうっすらと汗が滲んでいた。
走ってきたのかもしれない。

___私の為に?なんで?


「チッ」


突然現れた太宰さんに、相手は凶器を振り回すと思いきや舌打ちをして凄い勢いで走り去って言った。

逃げ足早っ

太宰さんは右足を踏み出してから私を振り返って止まった。


「大丈夫かい?」


「……はい。」


手を差し出されたので捕まって立とうとすると腕を引かれ、すっぽりと彼の腕の中に収まった。

何事かと慌てる私に、太宰さんは少し震え声で呟いた。


「怖かった。...Aちゃんが居なくなってしまうかと思った。」


「!でも、貴方は私に...!
...私は、邪魔者です。太宰さんの言葉にやっと目が覚めました。
優しい皆さんに囲まれて、私に生きる価値が出来たと勝手に思い込んでしまった。」


「違うんだ。私はただ...。...Aちゃんは、邪魔者なんかじゃない。悪いのは、全て私だよ。後悔してる。だから、私の前からいなくならないでくれ。」


彼は拳を握りしめていた。固く、固く。先ほどの傷から血が滲み出ていた。

私を抱く力も、それと比例するように強くなった。

肩も、震えていた。


何れ丈あの時の一言に猛省しているかがよく伝わってきた。


「...太宰さn」


「私が、必要だから。」


「え?」


流石に此の儘では申し訳ないので声を掛けようとすると、彼の呟きが被せられた。


「私には、君が必要だから。それが君の生きる意味だとは言わない。けれど...。」


「ふっ、」


それが、何だかとても嬉しくて。私の口からは自然と笑みが零れていた。
彼のまだ震えている肩に額を押し付け、さらにふふふ、と笑った
まるで、生きていて欲しいと言われているようだった。


「ありがとう、ございます。」


太宰さんは、心底驚いた様子だった。


「君、そんな顔で笑えたんだね。」


「其処ですか、失礼ですね。私は太宰さんみたいに安売りしないんですよ。」

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みるきぃ - 死にたがり。さん» 読んでいただき、有難うございました!コメントをいただき、とてもうれしいです!これからもよろしくお願いします! (2016年7月8日 0時) (レス) id: 7101c83816 (このIDを非表示/違反報告)
みるきぃ - 紫苑さん» わわっすみません!初心者なもので…気づきませんでした!本当に申し訳ありません!!すぐに取ります!教えていただき、有難うございました!それと、観覧頂き、有難うございます!これからもゆるゆる更新しますので、よろしくお願いします。 (2016年7月8日 0時) (レス) id: 7101c83816 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - オリジナルはとった方がいいと思いますよ?あと、面白かったです (2016年7月7日 23時) (レス) id: 1f0daf69dd (このIDを非表示/違反報告)
死にたがり。(プロフ) - d(*´∀`*)b (2016年7月6日 6時) (レス) id: fd76360b65 (このIDを非表示/違反報告)
みるきぃ - おお!コメントありがとうございます!更新、遅くて申し訳ありません…。続きが気になるなんて、とても嬉しいです!これからもよろしくおねがいします! (2016年7月4日 21時) (レス) id: 7101c83816 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みるきぃ | 作成日時:2016年6月27日 20時

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