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今日も今日とて自主訓練。
いつものように深夜、木刀をふるっていると誰かが一人、近づいてきた。
「こんばんは。今日はすごかったね」
「こんばんは、えっと…」
同じグループの同僚だ、かなり強い人…ぐらいしか知らない。
「あ、ごめんね。俺のことは兄さんって呼んでくれればいいよ」
「にいさん…?」
「弟妹が多くてね、昔からもうこれがほぼ名前なんだ」
徴兵される人間の年齢には幅がある。見た限り12から40歳くらいまで普通にいる。
その中でもこの男性はその落ち着いた態度もあってか若めの男性にしては兄という渾名が、確かに、すごくしっくりくる。人徳かな。
「じゃあ兄さんで。私はAです。」
「そか、A。…A、良い響きやな。入隊してから初めて聞けた」
「まぁ女で事足りますもんね」
その言葉に、兄さんは形のいい眉を静かに顰めた。
気怠げだけど凛とした、清らかな瞳がこちらをしっかりと捉えてくる。
「俺に何の力もないから大声では言えんけど、周りの人たちのAへの態度、すごく気に入らんねん」
確かに、凄く心配そうに見つめていてくれたことを思い出す。
「それに今日の、髪は女の命やで、あんな風に切らせるなんてホンマにあかんやろ」
「割と自主的に切ったのでそこは問題ないです」
「そんな状況がまずおかしいの。知っとる?女の子やって人間やで?人並みに尊重されるべきや」
あれ?、元の、世界の、普通の人みたいだ。
それに同じ時間帯にサンドバックになってたはずなのに、そんなに周りが見えてたの?
「私が決めて軍に入ったんです。ある程度の覚悟はしてました。兄さんがそんな気にすることないですよ」
だから、そんな、兄さんが泣きそうにならなくてもいいのに
「…そか、」
そのあと無言で手を引かれ、兄さんにガタガタだった髪を切りそろえて貰った。
生まれて初めてのベリーショートはお世辞にも似合うとは言えない。
また少しずつ伸ばしていこう。
別れ際、兄さんに「今日から妹や。」と言われて少しうれしかった。
彼も一年目なので基本的には何もできないといわれたが、行動はこれまで通りでも、心の支えが一つ増えたのだ。
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Aya(プロフ) - ボマー!?お前性格イケメンかよ!?多分任務失敗したら消されるからの自爆だろ!!!任務より自分の気に入った相手優先とかヤバい(途中までしか見てない人の勝手な感想) (2021年6月8日 3時) (レス) id: b462e5db2b (このIDを非表示/違反報告)
燕(プロフ) - ROM専さん» 勢いの良さに笑っちゃいました…!ありがとうございます(?) (2019年9月26日 7時) (レス) id: 2e704aa56d (このIDを非表示/違反報告)
ROM専(プロフ) - mnちゃああああああああああ (2019年9月25日 20時) (レス) id: 19a3a955e7 (このIDを非表示/違反報告)
燕(プロフ) - にーたさん» 周りに説明する時は丁寧だけど胸中ではズバッと決まってそうなのでこういう表現にしました!色々考えた結果の文字数なので刺さったなら嬉しいです!コメありがとうございました! (2019年9月22日 10時) (レス) id: 2e704aa56d (このIDを非表示/違反報告)
にーた(プロフ) - 46の一文に痺れました。語らないでズバッと切るところが最高にカッコいいです。 (2019年9月21日 23時) (レス) id: 8f97026b0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:燕 | 作成日時:2019年8月23日 19時