＊5＊ ページ50
夫の存在に囚われず暮らそうと決め、進めてきた離婚。
私の勝手な独りよがりだったのかな。
『子どもたちに、お父さんはちゃんとあなたたちを想ってるよって、伝えられたらいいですね」
席を立った私に、担当の女性が言った言葉。
子どもたちには、夫の良くないことは言わないようにしていた。
望まれない子だった、なんて思ってほしくないから。
でも話すらしてこなかったかも。
ましてや、子どもたちのことを想ってるなんて、言ったこともない。
考えるって言ったけど・・
これは話合うしかないのかもしれない。
でも、やっぱり・・・いやでも、ってもんもんとした週末を過ごして。
翌週、ようやく加藤さんと会うことができた。
「加藤さんっ」
「え？あっ・・楠本さん・・・えっと」
お昼休憩が終わる頃、社食に来た加藤さんに声をかける。
元気がないような・・・目線が合わない。
「ごめんなさい」
「すみません」
まずはあやまろうと頭を下げると、加藤さんと声がかぶる。
「え？」
「あ・・」
一瞬顔を見合わせて、同時にぷっと吹き出した。
「俺たち、息が合いますね」
「本当ですね」
「・・・先日、もう結構前ですけど。失礼しました」
「いえ。私もきちんと事情をお話すれば良かったです」
良ければ座りませんか？と、人気のない隅のテーブルに案内される。
「俺がちゃんと聞く勇気がなかったからです。言い逃げしてすみませんでした。まさかあんなに忙しくなると思ってなくて」
「言い逃げ(笑)・・・お仕事大変だった、んですよね？」
「笑われた(笑)。はい、ちょっと立て込んでて・・予想外でした」
「お疲れ様でした」
「あ、ありがとうございます」
ふふって笑って、ぺこってした加藤さん。
その目がほんの少し揺れた気がした。
「・・事情、聞いてもいい、ですか？」
加藤さんが私をどう思っているのか、どんな気持ちなのか分からないけど。
もし由紀さんの言うように、ほんのちょっとでも好意を持ってくれてるなら。
ちゃんと言わなきゃって思った。
「夜、予定があると言ったのは・・保育園のお迎えがあるから、なんです」
「おむか・・え？」
「私、子どもがいるんです」
「えっ！？結婚されてたんですかっ」
「はい・・・あ、いえ・・・」
結婚というワードに素直に頷けなくて、曖昧に濁す。
固まったままの加藤さんは気づいてないけど。
これ、どうしよう・・・？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 226人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミホ(プロフ) - 美唯さん» 美唯さんありがとうございます♪またお待ちしてますね。 (2018年3月21日 17時) (
レス) id: e6b7e30dbe (このIDを非表示/違反報告)
美唯 - また続き楽しみにしてます (2018年3月7日 1時) (レス) id: 9da5bd590f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ki-bou | 作成日時：2017年1月7日 1時
