【まふまふ】世界にたった1人の魔法使い【歌い手】

第25話 ページ26

あなたside


『…まふくん？』




扉のむこう




なにかが起きているようで騒がしい





なにか部屋に仕掛けをされているせいで魔法が地味に使えなくてよくわからないけれど





『だれが…入ってきた…？？』




まふくん？



まふくんなの？





ここまで、迎えに来てくれたの？







それならきっと、天月くんとそらるさんも一緒だよね







でも何故だろう






私を呼ぶ声が聞こえない





ネックレスの気配を辿ろうとしても上手くいかない





もっと頑丈な魔法かけとけば良かった





そうしたらこの程度の妨害、ないも同然に辿れたのに




『っ…』

｢魔法使い。食事だ｣




扉に付けられた小さな窓が空き、かったいまっずいパンが2つ放り込まれた




ああ、閉じてしまうその前に








っだあぁ…ん…


『ねえ』

｢ぐ…っはなせ！！｣






激しい音が長い廊下に木霊した




私の影から出た、真っ黒の茨が職員の首を掴んだのだ





『なにがあったの？』

｢はなせ…っああああ！！｣





楯突くそいつの手のひらに




風を切る高い音を立てて



次にはぬるりとした水の弾ける音を立てて





1本の茨が突き刺さる






『なにが、あったの？』

｢や、めて…殺さないで…｣

『なら、早く話してよ！！』





また1本


もう片方の手のひらを貫いた





邪魔になった扉は激しい熱で溶かし、足元でぐつぐつと煮えたぎっていた






｢あ、アルファ2人と…オメガが…！｣

『それで？』





ゆらり、ゆらり




両手と首の茨だけではない




私と彼を囲むように伸びた数十本の茨が


彼を脅すように揺らめいている




｢アルファはほかの職員が…戦闘不能で隔離して…｣

『オメガはどこだ』

｢す、スタンガンでやられてアルファと同じ部屋に…｣


『…そう』






両手の茨を引い抜いて、治癒魔法をかけてやると




ほっとしたように息を吐いた






でもね









これで済むと思うな







『手を出したら殺すって、言ったよね』






首の茨を解いて、床に落とす





バランスを崩し元扉だった溶けた鉄の水たまりにくずれおちる





悲鳴が上がる




可哀想に



顔が半分焼けている






『私を舐めるな』





倍に増えた茨が





八方から体を貫いた








まってて






まふくん






今、行くから

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