十二騎士達の役目 7 ページ32
トール「カルは最初の頃と比べ、随分表情が出やすくなったな」
ラーズ「一般的には、出ているとは言い難いですが」
トール「ユアン効果だな。ああ見えて、カルは随分ユアンを気に入っている。Aもそうだったが、俺には優しさの欠片もくれなかったな」
そういえば、そうだった。ユアンのが来る前は、カルの元で魔法を学んでいたのはトールとA様。ユアンの兄弟子になる。魔法の素質があったのはA様の方で、トールは特定の魔法の扱いのみ長けていた。
それもあってか、苦手とする属性に対しての魔力調節が上手くいかず、カルが眉間に皺を寄せていた時期が懐かしい。
トール「でも、おかしいな。ユアンも俺と同じ属性が上手く扱えていない筈なんだが」
一言で言えば、性格の差だろう。
本人には口が裂けても言えないが。
ユアンはこちらから見ても、人を疑うという事がないくらいに純粋で真っ直ぐだ。何より変なプライドもないから、大地が雨水を吸うように物事を吸収していく。
あまりに純粋で、フィオナ様のストレートな言葉に毎回翻弄されている。あれはあれで、見ているこちらは楽しい。騎士の中で最年少で、可愛い弟ポジションである事は確かだ。
一方トールは、カルと対面した時には、皇族としての心構えが出来上がっていたせいか、ユアンと比べてプライドが高い。けど、高慢と言うほどではない。
A様の存在も拍車に掛かっていたのかも知れないが、あの頃のトールは、ある意味皇子らしい皇子であった。今はと言えば、民や臣下を始め、敬われている対象だ。戦略、知略もさることながら、家臣を無下にしない心の広さ。
その人柄と武術の腕から、憧れる者は多い。魔法は得意の雷撃を良く使用する事から、いつの間にか雷帝の異名がつくほどだ。
ラーズ「トール、何時までも昔の事を引きずっているんですか。アーネスト達の前では、止めて下さい」
トール「ラーズ……」
何か言いたそうな眼で訴えてくるが、こういう時はスルーするに限る。
部屋の中を覗けば、座学は終わっていた様で、アクセルとウェインは話をしていた。
アーネスト「トールギス様？」
トールの存在に気付いたアーネストは、拝礼する。
トール「楽にしてくれ、アーネスト。今日は顔を見に来ただけだ。ウェインもアクセルも楽にしてくれ」
ウェイン「は、はい」
トールを目の前に、ウェインとアクセルは些か緊張しているようだ。
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作者名：print11 | 作成日時：2018年11月22日 9時
