十二騎士達の役目 6 ページ31
フィムルの態度は今に始まった事ではないが、初めて来たときよりかは幾分マシになった。マシになったが、今が良いと言うわけではない。
ユアン「師匠、今日の作業はもう終わりですか？」
カル「あぁ、構わない。明日、続きをしてもらう」
フィム「ユアン、A様のとこ」
ユアン「うん、行こう！」
A様の事になると、こんなにも行動が早いのか。目の前のフィムルの行動に、しばし目を丸くした。それはトールも同じだったようで、部屋から出て行った二人、いや三人の姿を目で追った。
カル「それで、お二人は何故ここに」
トール「カルの研究状況の確認も兼ねて、騎士達との交流を取りに来た」
カル「そうですか。研究の方はまだ、実用的ではありません。ですが、既にユアンの専用杖には、相応の実用性は兼ね備えられています」
トール「だがあれは、使用者と作られた武具との相性が一番大きい」
ラーズ「ですが、一般向けではなく、騎士達専用にすべき重要秘密機構でしょう？ それに、私達の武器は全てそれに当たる」
カル「それに、私が今研究している転送魔法についても、トラッドノアが黙ってはいないでしょう。秘密裏に研究を進める必要があります」
魔法国トラッドノア。ムーンパレスが転送魔法についての解析をしている事を知られるわけにはいかない。それはトラッドノアに限らず、他の王国に対してもだ。
この事が公になれば、ムーンパレスは領土拡大を目指していると疑われる。その最初の矛先は、隣国のトラッドノアだろう。
トール「情報操作に対しては、カーティスの情報の元、俺の方でどうにかしよう。アーネストとセレスにも、手伝ってもらおう」
カル「カーティスが素直に応じるとは思えませんが、カーティスの協力は必須でしょう」
性格を抜きにすれば、カーティスは諜報員としてかなり有能だろう。だが、どういう経緯で騎士になったのかは、陛下しか知らない。
トール「もしカーティスを見かけたら、伝えておいてくれ。俺とラーズは、アーネストの所へ向かう」
カル「畏まりました。アーネストなら、アクセルとウェインへ座学の指導中です」
背を向けたまま、グレンから受け取った報告書に目を通し、魔石の解析に入るカル。相変わらず口数は最低限だが、話は通じる。ユアンがカルの元へ来てからは、性格が丸くなったようにも思える。
最初の顔合わせの時、トールとA様ではないが、表情が死んでいると思った。
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作者名：print11 | 作成日時：2018年11月22日 9時
