風柱とズルい継子の関係。【不死川実弥】

31.誰にでもいい所はある ページ31

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無一郎くんに襟元を掴まれ、ズルズルと引きずられる。一人で歩けるからと立ち上がろうとするが、そこそこのスピードの為、立てない。


まぁ、いいか。楽だし。家まで運んでくれ。
このまま寝てしまおうかと目を瞑っていれば、立ち止まった無一郎くんに冷たく言い放たれる。


「いつまでそうしてるの。いい加減重いんだけど。」

『無一郎くんが引っ張るから立てなかったんだよ！』


ポイっと地面に放られてしまった。なんなん？柱って本当雑。仮にも風柱からの借り物だよ？！大切に扱ってよね！


全く、と鼻息を荒くし辺りを見渡せば、そこは先程の鬼が暴れたのか、樹木が倒されていた。


巻き込まれた人がいないか確認するのかと思ったが、どうもそれだけではない。


なんと。無一郎くんは住処を失った動物達がいないかと見回っているのだ。びっくりだ。血も涙もない毒舌無気力人間だと思っていた。(ごめん、言いすぎた。)


でも…その優しさ、一ミリだけでも人間(主に私)に向けてもらえないだろうか。(遠い目)


そんな動物には優しい無一郎くんの周りにはいつの間にか動物達が集まってきている。だが、それ以上に…


「顔が見えないね」

『……』


昔から動物に好かれやすい私は、周りは勿論、肩や頭にも動物達が。


片っ端から鍋に突っ込んでやろうかと考えている私に何故動物達が懐くのか…さっぱり分からない。


「誰にでもいい所ってあるんだね。」

『そうだねーどんな冷淡な人にも優しい一面ってあるんだね♡って！嘘！嘘です！ごめんなさい！刀に手を掛けないで…！』


別に抜かないけど、と相変わらずの無表情で生意気な事を言う無一郎くん。(上官)私にはそんな感じだけど、動物達に向ける視線は柔らかく見えたから、なんだか嬉しくなった。



動物達と無一郎くんの優しさに触れ、癒された私は軽い足取りで帰路に着いた。



師範へのモヤモヤなんてすっかり忘れて、戻った事を元気よく告げると、香ってくる朝餉の匂い。釣られるようにお勝手に向かった。


『しはーーーん！今日の朝餉は…………』


言葉に詰まったのは、そこに師範がいなかったから。
代わりに居た割烹着を着た女性がコチラに振り返る。


言わずもがな、そこに居たのは師範と逢瀬を繰り返す女だった。


「あら？帰って来たんですか…？」


クスクスという笑い方が癪に触る。
折角癒されて、忘れて帰って来たのに…。


モヤモヤと嫌な感情が再び私の心を蝕んでいった。




あさひ

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