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『___呆気…なかったですね…』
「あァ。」
帰りの列車の中。
思わずため息が出てしまった。
あんなに頑張って情報収集をしたのに…
私が戦闘に加わった頃には鬼は塵となっていた。
どうやら実弥さんの一太刀で終わったらしい。
因みに、被害に遭った夫婦も甲2人も助かった。
甲2人は血鬼術で捕らえられ、数日間飲食をしていなかった。
その為、衰弱しているが、命に問題はないそうだ。
『どうしてあんなのに甲2人が…。』
「チッ!大方公私混同して色恋に現抜かしてたんだろォ。」
不甲斐ねェ。そう言った実弥さんに耳を塞ぎたくなった。
私も…あの時、実弥さんに現を抜かしそうになった。
演技ではなく、本気で…
『あ"ぁ"ーーーーー!!!!!』
何言ってんだ!私が好きなのは煉獄さん!
本気で…って!あんな状況だったからだ!
違う、違うと頭を振っていれば、実弥さんに煩いと怒られ、後頭部を鷲掴みされた。一体誰のせいだと思ってんだよ…!
「……そういやァ…煉獄となんかあったんかァ?」
お見苦しいものをとかなんとか言ってただろうが、と急にぶっ込まれ分かりやすく動揺したが、思い出した。
そうだ。実弥さんに誤解を解かなければいけなかった。
『薩摩芋が余っていて、食べ切れなかったのでご一緒しただけです。』
「……手料理振る舞ったと。体がどうとか言ってたんはァ?」
『……えっと…、』
口籠る私にいいから言えと圧を掛けられ、攻防の末に風呂上がりにタオル一枚だった所を煉獄さんに見られた事を言い顔を覆った。
「……。」
『引きますよね…はしたない。』
引かれてしまった…
自分のだらしない部分を実弥さんに知られてしまい、嫌われてしまったとがっくりと肩を落とした。
あれ?引かれていいんじゃん!嫌われていいじゃん!
そうだ。これで嫌われて…別れを告げられたら…いい…はず…
そう思っているのに、
今実弥さんがどんな顔をしているのか、次に出てくる言葉が怖くて顔が見れない。
「お。海だァ。」
予想していた言葉と違い、顔を上げると、
降りようぜェ。好きなんだろ?そう聞いた実弥さんに私が以前海が好きだと言った事を覚えてくれていたのかとくすぐったい気持ちになった。
____その瞬間、怖くなった。
私の中で何かが変わってしまう気がして。
『そうですね…降りましょうか…』
もうダメだ。これ以上は。
嫌われても幻滅されても。本当の事を言わないと。
何も知らずに笑う実弥さんを見て、この笑顔が見れるのも最後だと思うと、胸が押し潰されそうだった。
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あさひゆうひ(プロフ) - 京華さん» ナニシテンノ?おめめ心配。寝ろ寝ろ寝ろ。 (2月5日 5時) (レス) id: 62b927337a (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - 初コメント失礼致します(いやこれ何でコメントしてないの?え?読んでたよね?と困惑。バグってんの?まぁいいや←)一気読みしてしまいました。惚れてくれてる実弥イイ!笑いながら読んじゃいました。眠いのに実弥熱が沸き起こって眠れないけど寝ます。また書いて。 (2月5日 1時) (レス) @page50 id: bb9635485e (このIDを非表示/違反報告)
あさひゆうひ(プロフ) - なおさん» 完結して随分経つ話にコメントありがとうございます!とっても嬉しいです!鴉たち頑張りましたー! (2022年7月28日 23時) (レス) id: 62b927337a (このIDを非表示/違反報告)
なお - 鴉すごっ!天才やん そしてあさひゆうひさんもこのお話を考えれるなんて天才だよー 天才過ぎてヤバイ 不死川さんたちお幸せに!! (2022年7月26日 22時) (レス) @page50 id: ee464fdcd2 (このIDを非表示/違反報告)
あさひゆうひ(プロフ) - 環さん» 環ちゃん!久しぶり…!まさか読んでくれたとは!!!オチを書きたいだけのお話でした。コメントありがとう!とっても嬉しかったです♥ (2022年4月7日 23時) (レス) id: 9c7376e839 (このIDを非表示/違反報告)
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