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お館様のお屋敷を後にし、
気まずい雰囲気の中、沈黙を破ったのは実弥さんだった。
「何人もの人間が行方不明になってる。気ィ引き締めろォ」
『……はい。』
その通りだ。
これは柱が2人駆り出される任務。
私達が殺られるということは、
皆に負担がかかるだけじゃない。
柱二人でも勝てない鬼、そう思わせてしまう。
ここで食い止め、絶対に頸を斬らなくては。
「情報収集も必要だ。日が落ちる前に現地に着いときてェなァ。」
準備が出来たら迎えに来る、
そう言って通り道とはいえ、送ってくれた実弥さんにお礼を言って屋敷へ入った。
中に入り、引き戸を閉めると力が抜けた。
戸に背中を預けてズルズルと力無くしゃがみ込む。
分かってる。これは任務だ。
でも、夫婦のフリ…という事は、四六時中一緒という事で。
しかも、鬼の情報が中々掴めなかった場合、長期任務の可能性もあるということで。
一応。恋仲、という関係の私達が。
ひとつ屋根の下、朝も…昼も…夜も…
ずっと一緒に過ごすという事で…。
駄目だ。これ以上考えるな。
これは柱2人が駆り出される極めて危険な任務。
大丈夫。
あの方は公私混同なんてしない!
切り替えろ。そして、考えろ。
今私が出来る事を!
最低限の荷造りをし、参考になるかと数冊の本を手に取り、荷物の中に詰め込んだ。
そうこうしていると、表から実弥さんの声。
『は、はい!只今…!』
荷物を持ち急いで上り口まで向かうと、
そこにはいつもの隊服ではなく、着流しを着た実弥さん。
初めて見た実弥さんの着流し姿にドキリと胸が高鳴った。
『あ…えと…』
「そのままじゃ夫婦になんざ見えねぇだろうがァ。」
念の為隊服の上から着とけと言われ、私は急いで言われた通りにした。
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『今度こそ!お待たせしました!』
「……。」
『実弥さん…?』
視線を下げた実弥さんの頬は若干赤くなっていて、先程自分が実弥さんの着流し姿を見て思った事が過り、
目を三日月のようにし、にまにま。
『どうしたんです?Aちゃんの着物姿に見惚れちゃったなら言っていいんですよ?綺麗だなァ、って!』
「あ"?」
『嘘です!冗談です!だからその顔ヤメテ!!!』
ちょっとしたお茶目じゃないか、そう思い口先を尖らせていれば、実弥さんは
「綺麗だなァ、」
そう言ってくれた。
(語尾に着物がな、とつけ憎たらしく強調していたが。)
『………。』
「隠に今ある情報を集めさせた。歩きながら話すぞ。」
『………………………………………………はい。』
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あさひゆうひ(プロフ) - 京華さん» ナニシテンノ?おめめ心配。寝ろ寝ろ寝ろ。 (2月5日 5時) (レス) id: 62b927337a (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - 初コメント失礼致します(いやこれ何でコメントしてないの?え?読んでたよね?と困惑。バグってんの?まぁいいや←)一気読みしてしまいました。惚れてくれてる実弥イイ!笑いながら読んじゃいました。眠いのに実弥熱が沸き起こって眠れないけど寝ます。また書いて。 (2月5日 1時) (レス) @page50 id: bb9635485e (このIDを非表示/違反報告)
あさひゆうひ(プロフ) - なおさん» 完結して随分経つ話にコメントありがとうございます!とっても嬉しいです!鴉たち頑張りましたー! (2022年7月28日 23時) (レス) id: 62b927337a (このIDを非表示/違反報告)
なお - 鴉すごっ!天才やん そしてあさひゆうひさんもこのお話を考えれるなんて天才だよー 天才過ぎてヤバイ 不死川さんたちお幸せに!! (2022年7月26日 22時) (レス) @page50 id: ee464fdcd2 (このIDを非表示/違反報告)
あさひゆうひ(プロフ) - 環さん» 環ちゃん!久しぶり…!まさか読んでくれたとは!!!オチを書きたいだけのお話でした。コメントありがとう!とっても嬉しかったです♥ (2022年4月7日 23時) (レス) id: 9c7376e839 (このIDを非表示/違反報告)
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