深愛―しんあい―【不死川実弥】

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『え…？』


「折角儲けた命だァ、
事故前がどうだとか今のAが重苦しく考える必要はねェ。Aの人生だァ。」


『……っ』


「離婚したって
俺はずっとAの味方だァ。
頼りたくなったらいつでも力になってやる。」


『ご、ごめんなさい、私……』



ぽろぽろと大きな瞳から零れる大粒の涙。




謝んじゃねェ…
もう泣くなァ、
抱きしめたくなんだろうがァ…
諦めきれなくなんだろォ。






Aが悪い訳じゃねェ、
他人の事を考えすぎちまうAだから、
きっと人より多く傷付いちまってる。







多分、俺達だけが原因じゃねェ。
それをきっかけに色んな事が溢れちまってる。




ある日突然目が覚めて自由の利かない身体、
上手く話せない声。

変わってしまた自分や周わりの容姿。
　




どれだけ不安だっただろう。
どれだけ心細かっただろう。


それでもAは何時も笑ってたから、
大丈夫だろうと
そこまで重要視してなかったんだ。




気がつかなかった。
ここまで追い詰めてる事に。


悪かったァ、要らねぇもん背負わせちまって…
もうAは自由だ。








けどよォ、最後に一度だけ








「謝る事なんざ一つもねェ。
ただよォ、もし俺の我儘聞いてくれんなら、楓の誕生日、その日だけ、Aの一日を俺達親子にくれねぇかァ？」



友人として、と付け加えると
困惑した表情を浮かべながらも、コクリと小さく頷くAは

今も昔も変わることなく誰より優しい。





複雑だろう、怖いと思っているかもしれねェ、
でも、どうしてもAと楓の誕生を祝ってやりたかった。







たった1度。
最初で最後の
家族3人での楓の誕生日会だァ。







今まで出来なかった分、これからの分。
精一杯祝ってやりてェ…






楓が一生忘れられねぇ誕生日になるように。









Aの中で眠る以前のAが
一度だけでも楓の誕生日を祝えるように。




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