深愛―しんあい―【不死川実弥】

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Aside



‘前のAが俺の事どう思ってたか教えてやろうかァ？俺がAの事どう思ってるかァ…’



そう言って実弥くんは私の髪にキスをした。

正直訳がわからない。
覚えたてのスマホを手に取り、髪にキスをする男の心理というものを調べてみる。






(男性が髪の毛や頭にキスしてくる場合は、親愛の気持ちが強くあらわれています。
このキスには、性的な意味合いは含まれません。ただ、相手がひたすら愛おしいという思慕の心理から繰り出されるキスなのです。)






ひたすら愛おしいって…子供か？私は。
で？以前の私にもこう思ってたと…？
せ、性的な意味合いは、ない…と。


なんだ。期待して…馬鹿みたい。


既婚者子持ちに期待する方がいけないのかもしれないけど。





実弥くんが、皆が、
私に何か隠し事をしている事は分かる。


多分とても大切なこと。
嘘も隠し事も嫌いだし、寄って集ってなんで言ってくれないのか、問い詰めたい気持ちもあるけど、


私が問い詰める事で皆を悲しませたくない。


皆が私の事を大切に思ってくれてる事は分かるから。

多分、隠し事は私の為に沢山考えて決めた事だから。

だから、私は皆を信じて知らないふりをするね。

そこまでして隠したいなんて、聞くのが怖い気持ちもあるしね！





記憶を取り戻したいとだけ伝えて、
皆がもう大丈夫だって認めてくれるようになるまでリハビリ頑張るから
その時は私を信じて教えてほしいな。







＿＿＿コンコン



『はーい！』

「Aちゃん、今日もリハビリ頑張ろうか！」

『うん！任せといて！』

「ふふ。そろそろ退院の話でてるんでしょ？」

『そうなの！だからもっと頑張りたい！お母さんの煮込みハンバーグ早く食べたい！！』






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その日、私はカルテに書かれた自分の名前を見た。




不死川A




何となく感じていた。
実弥くんと楓ちゃんは他人とは違う何か。



それでも、想像出来なかった。
自分に夫がいて、子供が居るなんて。



心と頭がバラバラになっていく。
嘘だと、間違えだと叫ぶ自分と、
全ての辻褄が合って腑に落ちてしまう自分。





もしそうなら…




ねぇ、実弥くん、楓ちゃん…
今までどんな気持ちで私と居てくれたの…？



私…
知らない間にずっと2人を傷つけてきたよね？
無神経な事ずっとしてきたよね？







どうして言ってくれなかったの？








吐き気がするくらい
自分の事が心底嫌になったのは初めてだよ。



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