深愛―しんあい―【不死川実弥】

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あれからAは以前と変わらねェ。

抱きしめて、髪とはいえキスした理由を聞かれるかと覚悟していたが、

Aはいつもとなんら変わらず俺に接してきた。


そんなAに安堵と落胆が入り交じりながら
俺も何も言わなかった。





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「お！操作慣れてきたじゃねェーかァ」

『ふふ、でしょー？』


スマホを片手に慣れた手付きで
リハビリ、と目の前にいる俺にメッセージを送るA。


早く返信しろとでも言うようにスマホを振ってアピールされる。




Aの記憶の中に
スマホは存在してねェ筈だった。


ただ、しっかりとスマホだと言い、操作も断片的にだか覚えていた。



スマホ以外にもAが知らねぇーはずの店を知っていたり、

当時はまだ流行ってねぇギャグを言い出した事もあった。

その事から、恐らく記憶はあるんじゃねェか。


ただ深く眠ってる。


だったら、何かの拍子に思い出す事だってあんだろォ。


そんな淡い期待を抱きはじめていた。







Aのリハビリに付き合う為に
ケツポケットからスマホを取り出し、やり取りをしてやる。








“明日は楓ちゃんも来る？”


‘連れてくる。’
‘俺だけじゃ不満か？’


“だって実弥くん二人きりだとすぐからかうんだもん！”


‘全部本気だつったら？’







『ほら、またからかう！』



もう知らない！とそっぽを向くAが可愛くて、ついククッと笑っていれば

Aの機嫌は更に悪くなり頭まで布団を被った。



以前のAはこんな事はしなかったなァ…


Aも学生ん時はこんなだったのかと笑いは止まらないが、

悪かったァ、そう言って布団の上から頭がある辺りをポンポンと叩いていれば、俺のスマホから通知音が鳴る。









‘意地悪。でもそんな実弥くんが好きだよ’









「…………は？」



布団から鼻上まで顔を出したAはしてやったり顔で、照れた？なんて聞いてきやがる。



「大人をからかってんじゃねェ！」



ガバっと布団を頭まで被せてやって
どうにか顔が見られねェように、余裕を繕うのが精一杯だった。









なぁ、A
それ本気にしちまってもいいかァ？

前のAも今のAも

好きだ、愛してるつったら

Aは答えてくれるかァ？









Aと俺と楓の関係を話したら

Aは受け入れてくれるか？




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