深愛―しんあい―【不死川実弥】

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Aが目を覚まして半年が経った。


何時もの様にAの見舞いに行くと
胡蝶と入れ違いになった。
　

見舞いの礼とAの様子を聞くと
心体共に調子が良さそう、リハビリが順調なのは俺が毎日拘縮しねぇように体のを動かしていたからだろうと微笑していた。



「また聞かれましたよ。過去の自分はどんな人間だったか」

「…頑張ってんだァ。記憶取り戻そうと。ンな焦んねぇでいいのに。不安なんかなァ、記憶ねぇと。」

「そうですね、確かにそれもあると思います。でも、Aは不死川さんと楓ちゃんの為に思い出したいそうですよ」

「は？」

「不死川さんが責任を感じで毎日来ていると気にしているようです。」

「ンなの俺が勝手に…」

「私も否定しました。
でも、思い出したい理由は他にもあるようで…」



フフっと含みのある笑い声を上げる胡蝶に
早く言え、と急かすように視線を送ると


「こんなに自分の事を思ってくれてる人の事を思い出したい。前の自分がその人の事をどう思っていたのか知りたいそうですよ。」


既婚者に不毛な恋してたのかな、なんて言っていましたが、誰のことでしょうね？

そう言ってまた含んだ笑いをする胡蝶に
俺は視線を外し、さあな、と襟首に手を置いた。


「ふふ、真っ赤ですよ、不死川さん。」

「るせぇーよォ」

「……不死川さんには、敵いません…」



俯きパラリと落ちた前髪のせいで胡蝶の表情は見えねェ。


だか、なんとなく分かる。
お前はAの一番のダチだったもんな、


Aが事故に遭ってから馬鹿みてぇーに医学書読み漁ってたのも
駆けずり回って病院探してくれてた事も
どれだけAの事を大切に思ってくれてるかも分かってるつもりだ。


「胡蝶…」

「不死川さん、頑張って下さい！Aはちゃんと答えてくれます！」

「……あぁ、もう十分答えてもらってらァ。」

「何かあればいつでも仰って下さい。」



それでは、と胡蝶はペコリと頭を下げた。


わりィーな、と出しかけた言葉。
いや、違ェー
俺だけのAじゃねェ。
胡蝶にとってもAは大事な奴なんだ。



「俺に遠慮せず、ちょくちょく来てやってくれやァ。Aの奴、俺といんのに胡蝶、胡蝶って煩くてよォ。胡蝶といる時が一番自然なんだわァ。」



気心知れた女を友達には叶わねぇよォ、そう言うと、胡蝶は一瞬目を見開き、水分を含んだ。



悟られたくねぇのか、俯き
分かりました、と軽く会釈をして俺の横を通り過ぎていった。



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