あさやけだんし2 Y.Takaki

1 ページ1

.









…









階段を降りきってすぐ、私のほうから離した手。








ほんの一瞬だけ見上げた雄也は、





わかってたような悲しい顔をしていて、






でも次の瞬間には優しく微笑んで私の髪をくしゃって撫でた。








「…こうちゃん、」






雄也「はは、またすぐ寝たよ。こいつ。」








「そっか。





…だっこしよっか？」







雄也「んー？A見て、いかねーって。」








目をつぶりながら襟元にしがみついた仕草だけでも、すごくうれしそうに。








雄也「なー。




ゆーやがいいんだもんなー。」








そっと囁く雄也を横目に小さな彼に手を差し伸べたとき、いやいやってする寝ぼけた横顔に、





もっと愛おしそうに前髪を撫でてぎゅってきつく抱きしめるの。









雄也「あーなんでこんなにかわいいかな、こいつは。」






「ね、今日はたのしかったねー…」









しあわせって言葉がそのまま表情に出ちゃったようなその寝顔。









雄也「ったくA起こすなよ、」









汗がびっしょりな前髪をかきあげてまた彼を見上げた時は、きっと私と同じ表情をしていて。







微笑んだ雄也がこうちゃんのおでこにキスをした。








…









雄也「ねーちゃん泣いたのばれたな。」






「泣いてないってば、」







雄也「はいはい。」







…もう。









だんだんと遠ざかる夢の中みたいな喧騒。





街灯と、変わらない街並み。









.

2→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す