【d!】白【男主】 (ページ2)

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「降りろ」
『はい』

しばらくの間車に揺られた後ドアが開く。降ろされる時に紐を強く引っ張られたせいで首が痛かった。

どこかの建物の前にいるようだが、視界が塞がっていて詳しいことは分からない。
大勢で集まって宴会でもしているのだろうか、騒ぐ声が外にいるAの所まで聞こえてくる。

焦りからか男の歩みも早く、Aは引きずられるようにして会場の中へと入った。

準備をしろ、と放り込まれた狭い部屋の中であらかた準備を終えたAが鏡を見て身だしなみをチェックしようとすると、その白い首元に赤い擦り傷が出来ていた。きっとさっきの紐のせいだろう。

めんどくさいな、と思いながら擦り傷を隠すために道具箱の中から白粉を出して首にはたく。

『よし』

傷が完璧に隠れたことを確認すると、Aは琴と小道具を持って静かに部屋を出た。

会場への道順を忘れないように頭の中で反芻しながら暗い廊下を進む。古い建物なのかAが床を踏む度にギシギシと軋む音がした。
その不気味な雰囲気に思わず走り出してしまいそうになるが、それをこらえて深呼吸して落ち着かせた。ここで焦れば本番でも焦ってミスをする。こんな日にミスなんかすればそれこそどんなひどい目に合うか分からない。

焦らずにいつも通りにすれば良いだけだ、とAが思いながら目の前の曲がり角を曲がろうとした時。

カチャリ、という音と共に後頭部に当たる硬い感触と口を覆う手。

「動くな、撃つぞ」

銃を押し付けられる感触に、パニックになりかけたAは黙って震えるしかない。

「お前何者や？今は宴会中やし水差されたら腹立つねん」

そう言って背後の男はゆっくりと口を覆う手を外した。問いに答えろということだろう。Aはバクバクと鳴る心臓を抑えてなんとか言葉を出す。

『ぼ、ぼくは舞子です！悪いことはなにも…会場に行こうとしてただけで…！』
「舞子？お前男やろ、ほんまかいな」

Aの言葉が疑わしかったのか男の腕がAの細い首を絞めだした。それに焦ってAは身をよじってなんとか逃げようとするが、がっちりとした腕からは逃げられそうもない。

『う…ぼくほんとに…』
「まぁ話は後で聞こか。こんな暗いとこで話してもなんやしな」

Aの意識が薄れていくのと共に体から力が抜けて抱えていた琴が大きな音を立てて床に落ちる。

「ロボロさん？何してんすか」

そんな声を聞きながらAの意識は暗闇に落ちて行った。