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手繰り寄せた糸の先に何もなくとも、握られた手綱の先に彼と共にある運命がなくとも。俺はずっと彼を求め続けるのだろうか。
( そんなん地獄だし沼だし、てか俺って大毅のこと……。 )
それはただ振り出しに戻しているだけに過ぎない。
『会いたい』
大毅へのブロックなんて気付いたら外れていて、我に返ることなくそのメッセージを送信した。普段なら何時間も置いてから返信をする彼が、一瞬にして既読を付ける。
『二人になりたい』
追い打ちをかけるようにメッセージを送る。もうすぐ定時退社の時間であり、数日前のこの時間は大毅が朱里さんを迎えに来ていた。
意図したわけではないが、どうしても妻より俺を優先してほしいなんて潜在していた自己顕示欲が溢れたのだと思う。
『駅前』
たったそれだけの言葉で俺の心は満たされる。
仮にも勤務中だと言うのに、夢中になってスマホをじっと見つめてしまった。
「神山、なんかいいことあった？」
すれ違いざまに中間部長が俺の顔を伺った。ピシッと姿勢を整えて「すみません」と一言断りつつ。
「神山が元気ならそれでいいんよ」
「ありがとうございます」
頭をぽんぽんと撫でられ、中間部長がコーヒーを汲むためにボタンを押していた。それを横目で見ながらも、今度は朱里さんを盗み見る。
( ──そういえば。 )
大毅と再会した夜のこと、大毅は朱里さんとのことを相手が金持ちだから結婚したと嘲笑っていたが本当にそうなのだろうか。
本当であって欲しい、なんて。このプロジェクトが終わったら打ち上げに行こうと話す仲にまでなったのに、それでも胸中にある気持ちなど一ミリも変わっていないのだ。
定時に上がり、中間部長を初め同じ部署の方に挨拶をして会社を後にする。
大毅に会える。そう思うだけで、足取りは自然と軽くなった。駅へ向かう足運びも、流れてく街並みも全てが遅く見えた。
「大毅」
駅入口のベンチに腰を落とした彼に声を掛けると、ゆっくりとこちらを振り返る。何も会話が発生しないままに、腕を強く引かれて車に乗り込んだ。
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続く (更新停止中)
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ちゅ(プロフ) - アサレさん» 今はあんな人と結婚しなくてよかったと思えてますから大丈夫です！逆に気を使わせてしまってすみません。お話に共感してしまいます。これからも陰ながら応援しております！ (2021年8月2日 0時) (
レス) id: b37e093299 (このIDを非表示/違反報告)
アサレ(プロフ) - りっつさん» コメントありがとうございます。傑作だなんて、最高の褒め言葉です。。(；；)これから予測できない展開にしていけたらなと思っておりますので、ご期待ください…！ (2021年7月24日 23時) (レス) id: 1f1c37d9bd (このIDを非表示/違反報告)
アサレ(プロフ) - ちゅさん» そうだったんですね。嫌な記憶を思い起こさせてしまったのならごめんなさい、でも少し運命を感じてしまいますね。。お気遣いありがとうございます、自分のペースで執筆していきたいと思っております…！ (2021年7月24日 23時) (レス) id: 1f1c37d9bd (このIDを非表示/違反報告)
りっつ(プロフ) - ヤバいですドキドキ止まらん、どうなるの？二人とも。続き楽しみすぎます傑作！ (2021年7月24日 14時) (レス) id: d038e49da9 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅ(プロフ) - 自分が誕生日に好きな人から結婚式の招待状を渡された経験があったのでちょっと涙が出てしまいました。突然すみません、これからも楽しみにしています！無理のない範囲で頑張ってください！ (2021年7月24日 0時) (レス) id: 647b3f08c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アサレ | 作成日時：2021年7月23日 20時
