023 ページ23
.
彼女の働きぶりは目を見張るようなものであった。任せた仕事は勿論、俺の仕事を手伝ってくれたりこれから頼むようなことを事前に終わらせていた。
少なくとも、結婚式にて彼女を心の中であんなに罵っていたことを謝罪したいくらいに彼女の笑顔は一点の曇りもないものであった。
「神山さんは高校で大毅と出会ったんですよね？」
「はい。席が前後になったのでそれをきっかけに」
「私は職場で大毅と出会ったんですけど、大毅のこと気になりだした頃に大毅からも距離を縮めてきてくれて……。大毅の太陽のような笑顔がずっと大好きなんです」
( ……聞いてないんやけど。 )
理不尽な当てつけをして、屈辱的な思いをもう誤魔化せないほどの彼女の純潔さを前にしても、彼女を好きになることはできない。
「そういえば朱里さん、帰りはどうされるんですか？」
朱里さんとは、重岡だと大毅と被るだろうということで、彼女から提案した呼び方だった。仕事の共同作業をした流れで共にエントランスまで来てしまった中で浮かんだ質問を投げてみる。
「今日は大毅が迎えに来てくれることになってて」
「朱里」
「あ、大毅！」
彼女が振り返って大きく手を振った先には、襟をきちんと締めた仕事モード大毅がいて、俺に目もくれず朱里さんの元へ寄る。
「あれ、なんで神ちゃんがおんの？」
「神山さんと同じ部署に配属されたの。暫く一緒に仕事をすることになったんだ」
「へー、そうなんや。神ちゃん、朱里をよろしくな」
邪魔者はどっちだ、第三者はどっちだ。
そんな分かりきった問いに答えたくなかった。
( …俺が部外者やん。部外者ってか、多分そんな立場にも立ててなくて、なのに俺は勘違いをしていて。)
それでも、それでもなお。
「…うん」
大毅が朱里さんの腰を抱きながら彼女をエスコートして会社を後にしても、それでも。
どこかで彼を求めている。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 411人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちゅ(プロフ) - アサレさん» 今はあんな人と結婚しなくてよかったと思えてますから大丈夫です！逆に気を使わせてしまってすみません。お話に共感してしまいます。これからも陰ながら応援しております！ (2021年8月2日 0時) (
レス) id: b37e093299 (このIDを非表示/違反報告)
アサレ(プロフ) - りっつさん» コメントありがとうございます。傑作だなんて、最高の褒め言葉です。。(；；)これから予測できない展開にしていけたらなと思っておりますので、ご期待ください…！ (2021年7月24日 23時) (レス) id: 1f1c37d9bd (このIDを非表示/違反報告)
アサレ(プロフ) - ちゅさん» そうだったんですね。嫌な記憶を思い起こさせてしまったのならごめんなさい、でも少し運命を感じてしまいますね。。お気遣いありがとうございます、自分のペースで執筆していきたいと思っております…！ (2021年7月24日 23時) (レス) id: 1f1c37d9bd (このIDを非表示/違反報告)
りっつ(プロフ) - ヤバいですドキドキ止まらん、どうなるの？二人とも。続き楽しみすぎます傑作！ (2021年7月24日 14時) (レス) id: d038e49da9 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅ(プロフ) - 自分が誕生日に好きな人から結婚式の招待状を渡された経験があったのでちょっと涙が出てしまいました。突然すみません、これからも楽しみにしています！無理のない範囲で頑張ってください！ (2021年7月24日 0時) (レス) id: 647b3f08c7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アサレ | 作成日時：2021年7月23日 20時
