フラワーシャワーは黒薔薇で【JW赤×緑】

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「有給休暇？」


神山がこの時期に有給取るって珍しいな、と中間部長が深読みしようとし出す。


「友人の結婚式……」
「はい、なんか平日にやるみたいで」


休日にしてくれよとも思うが、どうせ二人の特別な記念日とか、そんなところだろう。それに合わせてわざわざ有給を取ったんだから、必ず二人の間抜け顔を拝めなくてはいけないのだ。



「神山は、その友人のこと大事に思ってるんやな」
「え…！あぁ…」



咄嗟に違いますという言葉が出ようとして、でも上司だし失礼なこと言ってはいけないと口を噤む。



「はい、そうなんです」



憎たらしくて仕方がない男。俺が苦しんでる間に女を作って結婚式にわざわざ招待する男。

皮肉？当てつけ？屈辱的な思いをぶつける先はどこにもない。



「じゃ、楽しんできてな」
「ありがとうございます」



柔らかく微笑んだ中間部長が俺の頭をぽんぽんと撫でる。

最近中間部長はよく俺にこうしてくれて、「頑張れよ」って励ましてくれるから、俺は絶対にあいつらの顔を見て、一生呪ってやると決めた。




結婚式の日は奇しくも俺の誕生日で、天気予報通り晴れてしまった。会場に着くと見知った顔がいくつもいて、軽く挨拶をした。それから指定された席に座り、式が始まるのを待つ。


式場の飾り付けには白い薔薇が沢山用いられていて、これは大毅が要求したことだなとすぐに分かった。

いつの日だったか、大毅と結婚の話を何となくしていて、その中で大毅が、式場は白い薔薇沢山使いたなぁと言っていた。なるほど、今日結婚する女のためだったのかとまたひとつ屈辱。



そしていよいよ、挙式がスタートした。

初めに新郎が入場する。相も変わらず愛らしいと言われる笑みを浮かべる大毅からは、心から幸せだという気持ちが滲み出ている。その上タキシードは似合っているから、益々彼への憎悪の気持ちが増した。


続いて、新婦が入場する。見た目の第一印象は、地味でパッとしない。顔も体型も何もかもが平均というか、多分中の下くらい。とても大毅が好みそうなタイプではなかった。

人相が悪くて肌は白くなくて、高校の頃大毅が言っていたタイプの女子と真逆だった。大毅の好みが変わったのか？俺の知らないところで。


大毅と女が並び、結婚の宣誓が始まった。今日ここに来てくれた人への感謝、二人のこれからのこと。どれもクサい台詞。

幸せそうに笑う二人に拍手をするが、早く別れてしまえばいいのにと願うばかりだった。




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