【暗殺教室】のろまな亀はゴールしたのか【浅野学秀】 (ページ7)

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６話＊帰り道ページ7

「なんだか凄い一日だったね……」

「うん……」

あの後、超生物は地球がなくなる前にヴェネツィア観光をしてくる、と言い残して窓から一直線に空へと飛んで行く。

防衛省の人たちはまだ校舎の設備点検だとか授業の準備をするだとかで、私たちはお昼前に家へと帰されていた。

表道へと続く長い下り坂を歩きながら、私は神崎さんや潮田くんたちとさっきまでの出来事を思い出す。

国家機密ということで烏間さんからの説明が終わった後、E組の生徒は全員誓約書を書かされた。

マスコミへリークしたら、なんてことも考えなくはなかったが、相手は日本政府だ。

何が何でも握りつぶすだろうし、記憶消去の手術も施されると耳にした。

現代の科学技術でそこまでの手段が取れることにまず驚いたが、どちらにせよ超生物だけでなく彼らもわざわざ敵に回してまで反抗する相手ではない。

だからこそ、秘密を共有するE組のクラスメイトたちは気兼ねなく会話できる希少な存在なのだ。

「マッハ20かぁ……私、数学苦手なんだよね。誰か分かる？」

「うーん、確かマッハ1が時速1200㎞だった気がする」

「地球の直径が大体13000㎞だから……約30分で地球一周出来ちゃうね」

私の言葉に潮田くんたちは顔を引きつらせる。

そりゃそうだ、人間ですら達成できていないようなことをいとも簡単にこなしてしまう謎の生物が突然目の前に現れて担任になっておまけに暗殺を依頼されたのだ。

今更ながら、現実性の薄さに気付く。

「烏間さんはプロの暗殺者も送り込まれるって言っていたし……多分、僕らはあの超生物が逃げ出さないための囮だろうね……」

「そりゃあ、世界各国の軍隊でも歯が立たない相手を本気で中学生に依頼するはずないよ」

自分で放った発言で傷つくのも何だが、人質同等の扱いをされていることに何とも言えない憂愁を抱いてしまう。

一方で、神崎さんは明るい面持ちで私たちを慰めてきた。

「そうね……でも、理事長が担任になるよりは宇宙人が担任になるほうがずっと怖くないと思わない？」

彼女の発言を聞いて、理事長が担任をしている光景を想像する。

その状況が超生物を暗殺するよりも過酷か環境であることは、容易に思い浮かぶことが出来る。

もしかしたら教師としてのあの男は幾分かマシなのかもしれないが、少なくともその姿を知らない私たちには無理な話であった。

彼女のおかげで、これからの不安を少し減らすことができたのではないかと思う。