【暗殺教室】のろまな亀はゴールしたのか【浅野学秀】 (ページ5)

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４話＊正体ページ5

「み、皆さん落ち着いてください！私、怪しいものじゃありませんから！善良な超生物ですから!!」

どんよりと沈んだ空気を打ち払ったのは、陰鬱な雰囲気を発生させた原因である黄色の超生物であった。

彼ないし彼女は生徒以上に大量の涙を流し始め、予想外の状況に先ほどまでの恐怖感が一気に吹き飛んでしまう。

自分よりも混乱している者が傍にいると、かえって冷静になれるという話はよく聞くが、超生物の反応に全員正気を取り戻せたのか教室内の喧騒は徐々に止み始める。

そうして目の前の超生物の存在を受け入れられるようになると今度は好奇心の方が湧き始め、おいおいと号泣するソレをよそにじっくりと観察させてもらうことにした。

この生物を一言で表すのならタコを例として用いるのが最適であろう。

ソレの頭部は毛も突起も見られない綺麗な球体を描いており、服の中身は不明だが何本もの触手が外に飛び出ている。

関節は存在していないようでにゅるにゅると手足のようなそれらは動いていた。

「混乱させてしまってすまなかった。」

最初に入ってきた英姿な男――烏間さんが淡々と状況の説明を始める。

曰く、自分たちは防衛省の人間で、先日月を爆破して7割蒸発させた犯人がこのタコ型超生物らしい。

生まれも育ちも地球だと主張するソレは宇宙人とは異なる存在だというが、来年の3月には地球も同様に爆破すると宣言しているとのこと。

「この事を知っているのは各国首脳だけ。世界がパニックになる前に……秘密裏にこいつを殺す努力をしている」

確かにこの生物の存在が表沙汰になれば、先ほどの教室の比ではないほど世界は混乱の渦に飲み込まれてしまうであろう。

説明をする最中にも烏間さんは特殊な素材で制作された対超生物ナイフで隣にいるソレへの襲撃を試みていた。

素人目に見ても烏間さんの身のこなしはトップクラスの実力であることが伺えたが、超生物は彼をも凌駕する圧倒的スピードでそれらを回避していたのだ。

その速さは攻撃を避けながら烏間さんの眉毛の手入れをするほどで、人外じみた能力と手入れへの執着に、生徒たちの間には異様な空気が漂っていた。