38 ページ39
.
「あ.........、
「あら、ショウくん。」
買い出し？半分持つわ、と言いながら、律が笑った。
「お父さんとお母さんがいちゃついてるから病室入れなかったわけかー。」
ケラケラと笑う律の髪を、屋上の風が揺らした。
「別にそんなんじゃねっつの...。
律........怒んねーのか。お前の、大事なサクヤを.....酷ぇ目にあわせたんだぞ俺は...。」
「うーん、まぁ、ダイナマイトさんから連絡受けて、ひとまず心配で来たけどさ。
でもダイナマイトさんが付いてるし、何よりサクヤさんが決めた事だから。
サクヤさんは絶対に死なないしね。本当は心配する事じゃないとは思ってる。
あなたの事怒るなんて、考えもしなかったわ。ふふ。」
そう言ってまた、笑う律から、遠く広がる向こうの空へと目を移した。
親父も......、俺を一言ですら責めなかった...。
「なァ.......律。
母さんも、今まで事件で死にそうな時とか、あったんか......。」
「.....なぁに、藪からぼうね。」
「.........他人に、言われた事がある...。ヒーローなんてすぐ死ぬだろ、って。率先して死にに行く仕事だって....。」
中学に上がってしばらくした頃だった。
学校の奴に絡まれた時だった。ズケズケと、さも自分は世の真理を心得ているとでも言いたげな口ぶりで言うくだらない奴だった。
『ヒーローなんてよ、他人のためとか言って、自ら死線に飛び込んで行く輩だろ。
いつでも死ぬ可能性を感じながら、なんでガキなんて持つんだろうな？
置いて行く気満々だろっつうのな。』
それなのに、そのくだらない言葉は俺の心に付いて、離れはしなかった。
くっ付いたその言葉はまるで喉に小骨が刺さったように、ジクジクと、ずっと痛み続けた。
両親の顔を見る度その言葉が思い出された。距離を取ることでしか、心の均衡が保てそうになかった。
父と母は、俺を置いて行く未来を常に念頭において、ヒーローとして人々の前に立つのか。そう思うと小骨がひどくジクジクと疼くのだった。
「ふーん...そう....。まぁ見ようによってはそうも見えるのでしょうね。」
律はひどく人ごとのように答えた。自分もプロヒーローの癖によ、と内心文句を垂れた。
そんな事を考えているうちにぽつ、と律が口を開いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 270人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
泉(プロフ) - ももさん» こちらこそお返事ありがとうございます*まさに読んで頂けているとはとても嬉しいです...！ライジングからでなく入って頂けるのはすごいなぁと思います。どれだけ空間支配書くのかと自分でも苦笑しながらなのでそう言って頂けると嬉しいです。応援ありがとうございます！ (2020年3月7日 22時) (
レス) id: 54e9f26b3f (このIDを非表示/違反報告)
もも - 泉さん» わざわざお返事ありがとうございます……！非ログ民でして気がつくのが遅れてしまいました(汗) 映画編、丁度拝読しております。この作品に出会えたタイミングにリアルタイムで更新されているお話があってとても嬉しく思っています。これからも応援していますね！ (2020年3月7日 11時) (レス) id: 9850fbc4ce (このIDを非表示/違反報告)
泉(プロフ) - ももさん» とても温かいコメントを下さって本当に嬉しいです*勇気を出して送って下さって本当にありがとう。もしよろしければですが、1年ぶりに今空間支配の新作を連載しています。映画編で4章〜未来編の間のお話です。ももさんにそちらも楽しんでもらえると幸せです* (2020年3月4日 19時) (レス) id: 54e9f26b3f (このIDを非表示/違反報告)
泉(プロフ) - ももさん» こんにちは！ももさんありがとうございます！一気読みして頂けるほど引き込まれて下さったなんて、作者冥利につきます*そして記念すべき100票目ありがとうございます！こうしてご報告して下さるなんてとても嬉しいです* (2020年3月4日 19時) (レス) id: 54e9f26b3f (このIDを非表示/違反報告)
もも - とても好きな作品でしたのでついご報告したいと思ってしまい……文章を書くのが得意ではないほうなので、不自由な日本語になってしまいましたが、コメント失礼しました。 (2020年3月4日 18時) (レス) id: 9850fbc4ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：泉 | 作成日時：2018年12月1日 21時
