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「俺はそれを聞いてたから余計に、この国の栄えように驚いたんだ。そんで、この地をあっという間に平定して、ここまで整備したハザマ王家ってのはなんて偉大なんだよ、ってな。道路歩いただけでもその技術に驚きっぱなしだったってわけよ。
.......それが、建国後、初の魔軍進行だ。もう"気"は収まったんだろ？って、なんで魔族が来るんだよって。襲来を告げる町衆の大声に、俺は立ち尽くすしかなかった。
しかも奴等、街の人間が逃げられねぇようにまずは城門を塞いだんだ。酷いもんだった.....城門周辺は特に無惨だった....。」
ギリ、とキリシマの握った拳が音を立てた。
「俺は、拳闘士だなんて言っても、ちゃんとルールのある中で、御前試合が前提でしか戦ったことがねぇ男だ。目の前の、残忍な光景に、俺の体はひとつも動かなかった.....。おまけにその情けなさに打ちひしがれてんだ、自分のどうしようも無さを痛感した.....。
俺が立ち尽くしてる時な、声がしたんだ。
城へ、みんな城へ！って。透き通るような声なのに、大声でな、ずっと叫んでた。」
カツキの脳裏に、まるでその場に居たかのようにAの声が再生された。
「市場でちょっと喋った店のおっちゃんとかが走って来て俺を見つけるなりさ、『姫様がああ言うんだ、兄ちゃん、諦めちゃいけねぇ、一緒に避難するぞ！』ってな。
姫が街中回りながら、あちこちワープゲート開けて行ってる、姫様を信じろ、って、全員ワープゲートに吸い込まれて行って、俺も引っ張られてウンベラータに居たってわけだ。
姫が、今までゲートを作っていた都市のひとつ、だったんだろうけどよ。何の因果か俺の目的地、オテロイと目と鼻の先だ。
........けどそのまま、オテロイに向かう、日常に戻る気にはなれなかった。
だって、
見ちまったんだ。
姫が遠くで瓦礫を見て周りながら、瓦礫に押し潰された人が居たんだろう。
向こうでさ、膝ついて、動かなかった。震えてたんだ、彼女は、恐怖に、震えてた。泣いてたんだ。
でも、そこからよろよろ立ち上がって、次をまた見て回っては、砦へ進んでた。
目をゴシゴシっと拭いて、息を整えて、それからまた、城へ！と叫んで。」
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作者名：泉
| 作成日時：2023年11月12日 22時
