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パチリ、と小さく火の粉が焚き木から弾け飛ぶのを見つめてキリシマは言った。
「いやぁ、俺、さ。他のメンバーみたいに王女様と馴染みあるとか、愛国心とか、そういうの関係無しにここに居んだよな。
俺は隣国、ユーフォルビアよりも遥かに弱小国さ。そこの国お抱え拳闘士なんだ。今回も、オテロイ国陛下主催の親善試合に向かうために、ユーフォルビアを通過しようとしてたんだ。
したらよ、丁度王都で宿取ってりゃ、あんなことになっただろ？
.......あの日のことは、忘れられねぇよ。」
キリシマが、つい数ヶ月前のことをすでに懐かしむように目を細めて話すのを、カツキは見ていた。
「あの日、せっかくユーフォルビアに来たんだからって、王都の見物してからオテロイに向かおうって、思ってたんだ。
王女....ハザマはこの国を田舎の小さい国だって言うけど、俺の国に比べりゃしっかり交易や街道も整備されていて、栄えた国さ。
俺の国は古いだけの弱小国だけどよ、じーさんやばーさんがよく昔話は聞かせてくれるんだ。それで聞くかつてのユーフォルビアの話とは、実際ずいぶん違った。」
「.......ンだ、そのかつてのユーフォルビアってのは。」
お、食いついてきたな、とキリシマは悪戯っぽく笑い、上機嫌で続けた。
「かつてのユーフォルビアは、それは荒廃した地だったらしい。今の情景からじゃ想像もつかねぇよな。
昔は、生き物は住めない土地だったんだってよ。強い"気"が渦巻く土地で、それに当てられて普通の生き物は全て死んじまうらしい。
そんでその"気"を目当てに魔族が度々押し寄せる地だったとかな。その"気"の届かねぇ場所、その辺境にようやく人が住まうようになったのが俺たちの国だってよ。
今となっちゃそっちの方がファンタジーだよなぁ。」
「おい、ユーフォルビアへの魔軍進行は、初めてじゃねぇっつうんか。」
食いつきようと言うか、カツキの剣幕に少したじろぎながら、キリシマは胡座を組み直した。
「いや、まぁじーさんばーさんが話す半分御伽話みてぇなもんなんだろうけどさ。
それを平定したのが、現王家であり、建国の祖ハナモリだって聞いてるぜ。
なんか元々、そのユーフォルビアの地は流れの異能者達が管轄してたって話だけどな。ある時それでふらっとやって来た男が、あっという間にその"気"を収めちまったって話だ。それで国が出来上がったんだと。」
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作者名：泉
| 作成日時：2023年11月12日 22時
