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「さぁ、では出発しましょうか！」
翌る朝、よく晴れた陽光のもと、こざっぱりとAは言った。裏腹に、乗り気でない様子の一同に気付くと首を傾げた。
「だァから、何処へだよ。
俺らはこの後の計画なンも知らされてねんだぞ、ったく、お前はいつもなぁ
「あっそうだっけ。カツキったらお母さんみたいに言わないでよ。」
おかっ.....、と引き攣った顔で言い淀んだカツキに、隣に立っていたキリシマが「お前そんなゴツイ見た目なのに結構苦労人なんだな。」と苦笑した。ウッセ、とカツキは吐き捨てたがそこから嫌がる様子は見せないようだったので、Aは新しいメンバーの参入の様子にほっと胸を撫で下ろした。
「伝えてなかったかしら。
これより我らハクゲイへと向かうわ。魔王軍との戦いの前に、ちょっと寄って行きたいのよね。」
「いやっ、ちょっ、Aちゃん....！まさかハクゲイ連峰のこと....！？白く切り立った山々はあまりに過酷で、許可の無い入山が禁止されている危険区域じゃないか.....！」
「流石はイズクね。山出身者が居ると心強いわ。」
「全然ちょっと寄ってくような場所じゃないんだって.....！」
ふふふ、と微笑むAに余計に慌てるイズクに助け舟が出た。
「ミドリヤ、だったっけ。ちょっとAちゃん呼ばわりには度肝を抜かれたけど......彼の言う通りだ。俺はこの辺の出身だけど、あの主峰へ登るには下手をすれば1ヶ月ががりだし、ましてや貴女は王女様です。山に慣れていない者には危険すぎる。
それにとにかく、許可がないことには入山も無理ですよ。」
そう言って眉を下げるオジロにAはきょとりとした。
「........そう、これも言ってなかったわね。
まず、この旅の鉄の掟を王女として改めてみなに言い渡します。」
王女の空気が一変し、途端に身じろぐようなプレッシャーが放たれたのにオジロを始めとした面々は動揺した。
「私のことはAと呼ぶこと！
敬語もなし！
破ったらもう口きかないんだからね！」
高らかに言い放たれた駄々に、肩がずるりと下がる者、慣れっこで苦笑するしかない者、メンバーが増えただけに様々であった。
「あっ、言い忘れたわ！
あとは絶対に、
死なないことっ。」
最後のニッ、と勝ち気な笑みに、全員がどうにも、ほだされてしまうのだった。
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作者名：泉
| 作成日時：2023年11月12日 22時
