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「カミナリは元々用心棒仲間でさ。大型の商業団なんかの護衛には複数人が雇われるんだけど、そういう時はよく組んでたんだ。
まぁちょっとノリは軽いけど、広域制圧に関しては右に出るヤツは居なかったよ。
それが今や臨時のギルドマスターってわけ。」
勝手知ったる、という様子で勝手にソファに腰掛けて、慣れた様子で説明をするジロウにAは感心しきりだ。
「俺だってこんなこと頼まれるなんて思ってもみなかったって。仲良くしてたギルドマスターがこの戦乱でギックリ腰なんてさぁ、ほんと。」
飲み物の入ったトレーをほとんど揺らさずに、開いた扉をコココン、と軽快にノックして青年が口を開いた。
「遅ればせながら、俺はカミナリデンキ。王女様がご無事で、こうしてお会いできること、至極光栄っす。」
そうして頭を下げながら、スッとグラスをAの手元に滑らせた。やっぱ上等なのは無くって申し訳ないっす、と苦笑しながらも、シンプルなカップアンドソーサーに揺れるあたたかい色の紅茶を見てAは微笑んだ。
「ありがとう、あたたかい紅茶なんて久しぶりよ、嬉しいわ。
カミナリくん、よろしくね。私のことはAって呼んで。」
そう言われて思わずカミナリはジロウの顔を見た。いいんだってさ、そういう姫様なんだよ、とジロウは肩をすくめて見せた。
「じゃぁ......Aちゃん、でいっすか.....。」
「敬語も要らないわ。同い年くらいでしょ？それにお気付きの通り、身分を隠したいの。
ほら、どう見ても一般市民なのに敬語なんて使われてたら変でしょ？」
市場で購入した服を得意げに見せながら言うAに、カミナリは再びジロウと視線を合わせて共に苦笑した。
「じゃぁ、違和感ハンパねぇけどお言葉に甘えて。
Aちゃんたちはここに戦力を探しに来たんだろ？外にもなんか只者じゃない感じの連中居たけどお仲間ってとこ？
王国の危機だ、姫様の力になりたいって戦士たちが集まってる。Aちゃんが一声上げればちょっとした軍勢にはなるぜ。」
流石と言うのか、カミナリの鋭い観察眼にAは口角を上げた。
「ええ、でも王女だと明かすつもりはないの。軍勢も要らないわ。」
「えええー.......、」
この国の姫様ってこんななの.............？と思わず怪訝な表情で本音が出たカミナリに、ジロウは腹を抱えて笑った。
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作者名：泉
| 作成日時：2023年11月12日 22時
