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ギイッ、と木戸が高い音を鳴らして開いた。
ギルドというか、酒場というか。向こうにカウンターの据えつけられた、少し広めの食堂といった具合の建物だった。
「まぁギルド機能を引き継いでるって言っても公にすれば魔族の襲撃に遭うだけだしね。
ここも細々って感じ。それでも、聞きつけた猛者たちは集まってる。いつもは見ない顔も揃ってるよ。」
賑わう人の間を縫って進みながら、用心棒稼業であるジロウはそう説明した。
Aは頷いて、静かにその面々を視界に入れながらジロウの後について進んだ。
「カミナリ、いつものと、あとこっちの子は、そうだな、紅茶でもちょうだいよ。とびっきりの銘柄のをね。」
カウンターに辿り着くと、バーテンダー風の男に向かってジロウが声をかけた。
「おっ、ジロウじゃん！久しぶりだなぁー！つかうち喫茶じゃないんスけど。銘柄の紅茶って。
ね、綺麗なお姉さんも、ここが貴族の屋敷か王城には見えないよ、........ねぇ、
ってちょい待ち。ジロウ、お前がそんなこと言うなんてまさか......。」
金髪に稲妻のような特徴的なメッシュの入った青年は、最初の軽快な笑顔からみるみる深刻な顔になった。
「そのまさか。奪還、成功だよ。」
「おまっ......お前ってヤツはさ...........！」
ジロウの言葉を聞いて青年の顔はみるみるうちに上気した。ガシッとAの手を取り、強く握ったのにAは面食らった。
「ほんっっっっと最高だな....！良かった.....！！」
目尻にわずかに涙を滲ませて言った青年に、Aはああ、この人も私を案じてくれていた1人なのだと察して思わず顔が綻んだ。
「おっと、いけね。ジロウさ、仕入れの話なら奥で聞くから、お連れさんとそっちの部屋で待っててくんね？ここ預けたらすぐ行っからさ。大丈夫だってちゃんと飲み物持ってくって睨むなよ。」
青年は静かに周りへ視線を這わせると、明るい口調でそう言った。よく通る声。この空間で数人が意識を向けているのがわかったが、ほどなくしてその気配もほどけた。
なるほどこの青年、役者である。Aはジロウと頷き合って奥の部屋へ足を向けた。
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作者名：泉
| 作成日時：2023年11月12日 22時
