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「フン、ローブ被ったお前だけで店行くと不審客だから付いて行けってよ。お前の用心棒がうるせぇ。」
「そうなの？キョウカも過保護なのよねぇ。
じゃぁついでにカツキも服買い足したら？マント無い時ちょっと目のやり場に.......」
ローブに袖を通しながらAがもごもご言うのでカツキは噴き出した。
「っくく、ンだそれセクハラかぁ？王国のコンプラどうなってンだよ姫様？」
「やっやめてよ、そんなんじゃないし、カツキに姫様なんて呼ばれたら余計にむず痒いわ。」
「へーへー。けど王国の服ダセェんだよ、探す気にもなんねぇ。」
「たしかにカツキの一族の装飾ってとても綺麗よねぇ。刺繍なんてとても繊細で、それでいて華やかで、まさに逸品だわ。糸の染まりが違うのかしらね！
いいなぁ、いつか私もカツキの郷の市場で買い物がしたいわ！」
ふーん、ンな言うほどかよ、と空を仰いだカツキに、Aはひとつ提案した。
「とりあえず、今回は私が案内する番ってことで、私が選ぶのはどう？王国だって色々服の種類があるのよ。」
しゃぁーねーなぁー、とわざと渋って言うカツキに、Aは思わず笑いが込み上げた。
「こんにちは！ちょっと見せてもらうわね、旅装束はこのあたり？」
店主は顔に年季の入ったシワを刻んだ女性で、Aの通る声にぱっと顔を上げた。
「ええ、このワゴン一帯よ。近頃は街を出る人も多くて、旅装束は多く仕入れているの。
あなたも出発の準備を？」
「ええ、まぁ、そんなところ。あら、これなんて素敵ね。生地も美しいだけじゃなく丈夫なものだわ。」
Aが1枚を手に取り広げて言うと、女主人は目を細めて言った。
「お目が高いのね。少し前までA姫様もよくこの街へいらしていてね。
姫様は見た目はそこそこに、機能性重視の方で、この北部の織物を重宝されていたの。だからうちの店でもこの織物はいつも仕入れに入れているのよ。」
姫様........今頃どこでどんな目に遭っておられるやら......と呟いて、たまらず溢れた涙を店主はエプロンで拭った。
Aは開きかけた口をきゅっと閉じた。そして先ほど耳飾りと換金しておいた路銀を取り出して、店主の手に置きその手を握った。
「お代、これで足りるかしら。
きっと、この国は大丈夫よ。元の活気ある国になるわ。」
最後の語尾だけが僅かに震えたその言葉を、カツキは静かに聞いていた。
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作者名：泉
| 作成日時：2023年11月12日 22時
