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「なに、アンタたち手、繋いで帰ってきたの....！？」
ジロウが皿を手に、その三白眼をやや見開いてそう言ったが、Aはしれっと「ううん、カツキが来ないから引っ張ってきたの。」と言うに留まった。
半分王子の視線が刺さるのが分かったが気付かぬふりをしてそのままメシを食った。
その晩はそのまま宿のベッドで眠ったが割とスムーズに寝ついた。
「ああ、やぁっっっっと、着いたわね......！
交易の街、ウンベラータ！」
Aが街の砦をくぐって清々しく言ったのとは対照的に、街の空気はあからさまに沈んでいた。
「以前の第二の都市、ウンベラータとは似ても似つかぬ様相だな....。」
「前より人も居ないしなんていうか......街全体が沈んでるね.....。」
「.....しょうがないよ、山を超えた王都であんなことになっちゃったんだもん、避難した人も多いんとちゃうかな。」
旅のメンバーまでもが沈んだ雰囲気に呑まれ始め、Aは慌てて口を開いた。
「とっ、とにかく市場に行きましょう！この国1番の規模よ、さぁようやくドレスとさようならね！」
街の大きな市場通りを前にして、一同は閉口した。
「.......大きいは大きいけど......。」
「お店、思ったより少ないね....。」
イズクとウララカは顔を見合わせた。村の麓の町ぐらいにしか赴いたことがないイズクでも、わっと驚けるような状態ではあまりにもなかった。
「お店があるだけありがたいわ！
ちょっと物色してくるわね！ショートくんももう少し身分の隠せる服が必要じゃない？あっちに男性用の店があるわよ。」
ああ、そうだな、と応じてショートもふらっと示された店に向かった。
王族というのは、こうも危なっかしいものなのだろうか。他のメンバーは同様に頭を抱えて、苦笑したイズクがショートのカバーへ向かった。
「さぁ、どのお店に......ぶっ」
Aの目の前が突如暗くなったと思ったら、布の手触りがした。
目の前からそれを引き剥がすと、手元には外套のローブ。
「おっ前、身分隠す服探しに行くのにドレスで行くヤツがあるかよ。せめてそれ被ってろ。
.......それに、王女だってバレたくもねぇんだろ。」
「........そうね、ここには視察で何度か来ているし、私の顔がわかる者もいるかもしれないわね。
.......ありがと。」
Aは目を伏せて手の中のローブをきゅっと握った。
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作者名：泉
| 作成日時：2023年11月12日 22時
