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Aが、花のように笑う時。
Aが吸い込まれそうな静けさで、微笑む時。
そのどちらも。俺の視線はAに吸い寄せられた。
向こうの野原で、長い栗色の髪が風に巻き上げられるのを見た。
視線で追うと、Aはクスクスと笑って手のひらを空に向けて伸ばし、撫でるような仕草をした。
風と戯れながらくるくると踊り始めたのを見てどこか納得した気持ちだった。
同時に、火竜の鱗や翼でなく、こんなにも綺麗だと思ったのは初めてだった。
カツキは思考から目の前の焚き火に焦点を移した。
ふと手が動き、胸元の首飾りを手繰り寄せた。このペンダントを外せない理由。誰にも話したことはない。
炎にかざすときらりと光るその赤の奥に、わずかに宝石のファイアの如く青が浮かび上がるのだ。
あの頃、まだ魔力の扱いも何もなかった幼い頃。Aが必死に向き合って作ったこれには、無意識にあいつの魔力が流れ込んだのだろう。
あいつの瞳の奥と、同じ色。
ほとんどをそつ無くこなす俺についてこようと背伸びをして。
だのに俺がちょっとしたへまをすると失望するでもなく必死で助けようとして。
必死な時は無鉄砲で。
それなのに時折消えるんじゃねぇかと思うぐらい儚くて。
静かな横顔が綺麗で。
(あいつは、世界で出会った初めての、
俺の特別だったんだ。)
オレンジの光が照らす中、カツキはゆっくりと目を閉じた。
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作者名：泉
| 作成日時：2023年11月12日 22時
