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Aは目を瞬かせた。
「......その喋り方、どこかで。」
「ふ、驚いたな。絶対、忘れてると思ってた。
あなたは顔合わせは無かったと仰ったが、実は俺たちは、初対面でもない。」
その言葉にAの瞳は一層丸くなった。それに笑みをこぼしながら、ショートは嬉しそうに言った。
「パーティー好きじゃないの、山育ちだもの。ああ、ほし草にダイブしたい。
だったか？」
Aの脳裏に鮮やかに記憶が蘇った。
Aの父、ハルアキの即位後周年記念の頃だった。各地でパーティーが催され、貴族だ近隣諸国の王族だの屋敷へ招かれては祝賀パーティーがあったのを覚えている。
いつも通り幼いAは窮屈で退屈なパーティーに暇を持て余していたが、あるパーティーで年頃の同じ男の子が居たのだ。
見ると明らかに機嫌が悪く口を尖らせていて、きれいな紅白頭も相まって目を引いた。
『こんばんは。私Aって言うの。ねぇねぇ、ほんと、パーティーって退屈よね。
私もこういうパーティー好きじゃないの、山育ちだもの。ああ、ほし草にダイブしたい。
ほし草はむりでも、こっそり2人でお庭であそばない？ふふ、私いいもの持ってるのよ。』
ペラペラ喋ったあげくに悪い提案をするAに、男の子は目をまん丸にしていた。けれど次の瞬間には微笑んで言ったのだった。
『いいな、それ。乗った。』
「あっ、あの子が、ショート殿下だったの！？」
「こんな特徴的な頭のヤツ、そうそう居ねぇと思うけどな。」
ショートの砕けた物言いに、Aはこっそりと庭で魔石を使って遊んだあの夜を思い出していた。
「........俺は、あの頃、母親から引き離されて、そして無理やり剣と外交を叩き込まれていた頃だった。
あんなに、歳の近いヤツと無邪気に遊んだのは久しぶりだったんだ。あの時だけは、胸がすっとしたのを覚えてる。
..........けど、ほし草ダイブとか言ってたくせにパーティーに戻れば『我が国ロフォフォラ産のほし草は絶品ですわ、いちど視察にいらしては？』なんてしっかり外交絡めてるしな。
背筋が伸びてて、真っ直ぐ自分の立場で振る舞ってて。すげぇと思った。
.......だから、俺が妻として迎える姫は、Aしか居ねぇと思ったんだ。」
今回のは政略結婚に見せかけて、自分の初恋叶えようって、そんな下心だ。高尚なんて、程遠いんだ。と赤い顔でショートは視線を下げた。
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作者名：泉
| 作成日時：2023年11月12日 22時
