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山道を登ったその先に、小さく王都を見下ろせる景勝地があった。
その岸壁の先、毛並みの美しい白馬がその白に夕日を反射して佇んでいる。それに跨った青年は見るからに身なりが良く、少なくとも貴族階級以上であることは明白であった。更に遠目からでも顔立ちも整っている様子だ。
「いやどう見ても白馬に乗った王子様だよね。」
ジロウは声を低めてそばに居たウララカに耳打ちした。
「う、うん.....でも見るからにすぎるっていうか.....。お供も連れてないみたいだし......仮装か何かかな？」
そんな、それにしては衣装とか本格的すぎるんじゃ....とジロウがたじろいだ時だった。
当該人物が向こうでこちらに視線を結ぶのがわかった。近づいて来る一行を目に留めた途端、ぴたりと動きが止まったようだった。
訝しく思いながらも歩いて通過しようとすると、よく見れば青年のそのオッドアイが大きく見開かれていることに気付いた。
「あ、あの！」
うわ、声掛けられちゃったよ不審者だったらどうしよう、Aちゃんもおるのに.....とウララカが肩をこわばらせた。
「もしや、A、A王女殿下では.....！？」
しかもAファン、厄介だな...とジロウが内心頭を痛めた時だった。おもむろにAが口を開いた。
「あ.....紅白の.....流れる、お髪..............まさか、
オテロイ国第三王子殿下、ショート様.......！？」
えええっ！と一同が口を開けるのと同時に、隣国の王子と呼ばれた青年は瞬く間に馬から降り、Aの前に跪いたのを見て更に驚きが走った。
「あぁA殿下、やっと見つけられた...........！」
「ちょ、ちょっと待って下さい、殿下、お立ち下さい.......！」
Aが慌てて馬から降り駆け寄ると、それを見た王子はふっと口元を緩めた。そして立ち上がると、そのままAを抱きしめた。
「「「ふぉっ..........！！？！？.....！！？」」」
その流れるような動作に、一同は妙な声を発する以外にできることがなかった。
「........あなたは、変わらないな。」
「ッ、オイ！王子だかなんだか知らねぇがお前らの姫にこんな所業許しとっていいんか！テメェら護衛だろーが！」
「いやでも、オテロイのショート殿下って......」
カツキのどこか焦ったような剣幕にジロウは口篭った。そして抱擁を解いたAがそのオッドアイを見つめて言った。
「........殿下は、私の婚約者よ。」
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作者名：泉
| 作成日時：2023年11月12日 22時
