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あれから私たちは、王都近郊の誰も居ない町を出ました。
Aちゃんは眉根をしかめていたけど、王都の方角へ首に下げていたペンダントを空に掲げて、それからは一度も、振り向きませんでした。
ジロウちゃんの提案で、第二の都市ウンベラータへと行き先を決めました。王都のギルドが事実上壊滅状態で、その機能をウンベラータギルドが引き継いでいるそうです。
「うん、まずはそこで、仲間を探そう。
あと、市場に寄りたいわ。旅装束を整えたい。こんな邪魔ったらしいドレスはうんざり。」
上等で美しい王室のドレスの裾を摘み上げて、Aちゃんが忌々しそうにそう言ったのに、思わず私は苦笑した。
故郷の魔道村では、そんなドレスを纏った人を見たことすらなかったけど。本物のお姫様は言うことが違うなぁ。
それからようやく人の居る集落へ入り、馬を借りることができた。ウンベラータまでは山道で、さすがにドレスでは歩くのが厳しくなった。歩けるように裾を破く、と言うAちゃんを、意外なことにバクゴーくんが諫めた。
「アッホかてめンな格好で歩く姫が居るか。」
「あら、姫が歩かないとでも？姫だって歩けるに決まっ、ひゃぁ！やだ、荷物じゃないんだから、担がないでよ！」
Aちゃんが喋っている間にバクゴーくんがその肩に担ぎ上げてそのまま馬に乗せたのを、私はあっけに取られて見ていた。
「姫が歩けるか歩けねぇかの話してんじゃねぇだろ。
みっともねぇ格好してっと賊に襲われんぞ。せめて服買ってから喚けや。
ったく、中身は世話のやけるガキのまんまじゃねぇか。」
ぐっ、とAちゃんは押し黙って言い返せない様子で、渋々馬の手綱をとった。
「.......はぁ。これじゃまるで、貴族か王族だわ。」
ため息をつきながらAちゃんがそうこぼしたのを聞いて、王族だよ？と全員思っただろうけど、そこは誰も口には出さなかった。代わりにこっそりとジロウちゃんに耳打ちした。
(ねぇねぇ、バクゴーくんってこんなに保護者キャラだった？)
(うちもまだ付き合い浅いけどさ、それにしても.....、
A奪還してからだね。最初のイメージとはだいぶ、違うかなぁ。)
2人でじっ、とバクゴーくんの背中を見つめると「ア"？」と振り向かれ必死に話題を逸らした。
「でもほら、あそこ、Aより王族っぽい格好の人いるじゃん.....
って、え？なにあれ王子様じゃん。」
言ったジロウちゃんの目が点になった。
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作者名：泉
| 作成日時：2023年11月12日 22時
