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一同はその言葉に声を失った。立ちこめる暗い展望が、その場に渦巻いた。
「.........私とじいちゃんは、この国の国防の要。
我が国は軍を持たない。
魔物と戦いはすれ、近隣諸国との紛争は無用との祖父の方針よ。
.....戦いに身を置くのは自分だけでよいと、私が戦士となるのもひどく反対なさっていたわ。他の誰にも、血を流してほしくないと.....。」
Aは設置した魔石を拾い上げた。先程の押し寄せるAの魔力が魔石を境にぷつりと途切れたのをカツキは見た。
(トムラに居場所がバレねぇように魔力の吸収と隠蔽を図ったのか。)
カツキの脳内ではその場に似つかわしくない思考が過っていた。Aがこの時間を設けた意味。意味のないことはしないタイプだ。
(どうせくだらねぇこと気にしてんだろうよ。)
ぼうっと眺めていたAの手の中の魔石がギリ、と音を立てた。
「......私がこれから口にすることは、そのお祖父様の想いを踏みにじることよ。どうか、それでも.......聞いてほしい。」
次の瞬間、ザッ、とAが片膝と拳を地につけた。一同はその光景に目を剥いた。一国の王女の仕草とは到底思えない、それは、いち戦士の姿だった。
「......私は先の戦いで痛感した。いくら大きな力であろうとも、"個"では、この戦勝てない。
........あまりに酷いことを言う。
けれど..........。
これまで私に、国防に、足りなかったのは、他を巻き込む決意.....。
みんな、どうか、私と共に戦ってくれないだろうか。私と共に、血を流してはくれない、だろうか。」
Aの語尾は、震えていた。その心を痛めて、それでも決断する姿は誰しもの胸を打ったのだった。
「ケッ、」
そんな中、カツキが呆れた様子で口を開いた。
「やーっぱくだらねぇこと考えてたな。
ここに立ってるヤツは元より、命かけるつもりで集まってンだよ。今更すぎんだろ。」
「まぁそれは、カッチャンの言うことも一理あるかな。」
一理じゃねぇ、十理だ、と無駄にカツキがイズクに詰め寄るのを横目に、ウララカは微笑んだ。
「Aちゃん........いいえ、A姫。
私たちは、共に王国を救う、
仲間です。あなたの仲間にしてください。」
Aは思わず口を覆った。その目には、涙の携えた光が輝いていた。
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作者名：泉
| 作成日時：2023年11月12日 22時
