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ワアアアアア、と会場を歓声が満たす中、勝己が手を引いて立ち上がらせてくれた。
「.........っ」
視界が揺れ、一歩よろめく。
さすがに集中して結界術を使いすぎた。
そんなことを考えている隙に勝己が私を横抱きにしてしまった。
「ひゃ、........かっ勝己、歩けるし、救護ロボットもいるから...っ」
ぜ、全国放送が...と口ごもる私を無視して勝己はそのまま歩みを進めた。
「うっせ。俺んだから俺が運ぶんだよ。」
『アァァ...狭間...はい、爆豪決勝戦進出...。
しっかしなんかヤラシー展開だな!?お前ら好みの展開だァ!』
会場の歓声のトーンが一段上がったような気がしたのは気のせいと思うことにした。
救護室へ向かう廊下の途中、抱きかかえられた勝己の肩に頰を寄せた。
会場をあとにしたことで緊張の糸が切れていた。
「っく...また、勝己に追いつけなか....った...」
ぐっと眉間にしわを寄せ、悔しさに涙が頰を伝う。
「十分追いついてんだろ...新術、避けられねぇしだいぶ面倒だった。
ただ、俺に勝とうなんて100年早ぇわ。」
珍しく、屈託のない幼い笑顔で笑う。
驚きに涙が止まった。
優しい表情のまま、しかし強い瞳で勝己が言った。
「俺はAを守る。
けど俺がAを守んのは、Aが弱ぇからじゃねぇ。
俺にとってAが大事だからだ。
これは覚えとけ。」
「そう、なの......?」
弱いから守られるんだと、ずっと思っていた。
君に肩を並べられないと、一緒に居られないと思っていた。
君の笑顔がそれを打ち砕く。
「ぐす...でも次は勝つね...!」
「だァから100年早ぇーっての」
涙に濡れた顔のまま笑んだそのAの表情は、陽だまりの中で花がほころぶようだった。
リカバリーガールに診てもらうも、疲労だね、観客席でゆっくりおし、と言われ救護室を出た。
観客席に着くとみんながわぁっと集まった。
「Aちゃんんんん!!!爆豪くん相手にほんとすごかったよぉぉぉぉ!!」
「狭間!おめぇ爆豪と対等に渡り合ってたな!おめぇの戦い漢らしかったぜ!!」
「狭間くん!!目をやられたのか!!!爆豪くん、いくら試合と言えど愛する女性の顔面を攻撃するなど」
「ちっげーわ!」
みんなが口々にあたたかく迎えてくれ、また涙が滲んだ。
みんな...ありがと!と涙で濡れた笑顔が咲いた。
私の戦いはみんなが受け止めてくれていた。
決して無駄ではなかった。
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まなみ(プロフ) - まだ読み途中ですが…… 違う意味でも見応え十分だァァァ!!で噴き出しました。笑 マイク先生があのタイミングで知ったら言いますね。笑 でも、そうなるとバラしたのは相澤先生ですか……?笑 (2023年2月12日 16時) (レス) @page19 id: 33510eeae8 (このIDを非表示/違反報告)
眠 - 今続編呼んでるんですけど、5話にしてはかっちゃあああん。かっこよすぎ。もうここまでかっこいいとね、そのセリフ言われたいよね。要件だけ言うと、作者神すぎ。神作を作ってくれてありがとうございます。 (2021年9月29日 20時) (レス) @page5 id: cfd8dfa5f7 (このIDを非表示/違反報告)
泉(プロフ) - 紅葉さん» 紅葉さんめちゃくちゃ読むの早いですね...!?読んでいただいてるポイントの感想もらえるのってすっごく嬉しいです!そして私の意図しているところをめちゃくちゃ楽しんでもらえてて嬉しいwwコメントいくらでも下さい...すごい嬉しい...紅葉さんお友達になりたい... (2018年9月24日 1時) (レス) id: 54e9f26b3f (このIDを非表示/違反報告)
泉(プロフ) - 紅葉さん» めちゃめちゃ楽しんでもらえててコメント読む度ふっふふ...!ってなりますwめちゃくちゃ嬉しいです!なかなかオリジナルの登場人物に着目してもらえることってないと思うので、そこ褒めてもらえるの嬉しいです...!かっちゃん格好良く書けてたら作者冥利に尽きます! (2018年9月24日 1時) (レス) id: 54e9f26b3f (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - まさかの黒姫出現…?!何度もコメントすみません…!でも本当にこの作品好きすぎてヤバいですわ〜!!結界師も好きだしいつか絶界も出てきそうですね!てかあの黒い霧?って絶界の前ぶれ?! (2018年9月24日 1時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:泉 | 作成日時:2018年3月5日 0時