運命 ページ10
スマホの画面と目の前のビルを交互に見て、目的地へたどり着いたことを確認した。
ここは、武装探偵社の事務所。この二階にその事務所は位置するそうだ。
あの後、憂鬱な気分を抑えてなんとか仕事を終えた私はさっさと着替えて武装探偵社へと向かっていた。職場はバレてしまったし、すっぽかしたときが怖かったのできちんと律儀に国木田さん__証明書に名前が書いてあった__との約束を守った。
今から聞く話のせいでものすごく気分が落ち込んでいる。
なんとなく、街を埋め尽くす無数の糸のうちの一本を指で弾く。
これで誰かの運命が切れたら嫌だったので、今までこうやって糸で遊ぶようなことはしてこなかったのだが、今はそんな余裕は私にはなかった。
「建物はレンガ造りでかわいいのに……」
最後に弱音をひとつ吐いて、髪をまたきつく結った。
階段を登って軽く身だしなみを整える。
用事はともかくとして、この扉の先には運命の人がいるのだ。どこか乱れているところがあったらみっともない。
なんだかんだこの出会いを大切にしたい自分がいることに気づいて、ちょっと気恥ずかしくなった。
扉のガラス部分に金字で書かれた「武装探偵社」の文字に背筋を伸ばして、ドアノブに手をかけた。
「こんにちは」
「こんにちは、調査のご依頼ですか?」
事務所に入ってすぐ応対してくれたのは、麦わら帽子の似合うそばかすの少年だった。
どう見ても私より年下だ。ぱっと見たところ中学生くらいだろうか。
え?なんでこんな若い子がここで働いてるの?労働基準法大丈夫?
まだ声がわりをしていないような高めの声に、動揺と心配の狭間で揺れていると
「賢治、この方は俺の客だ。例の事件の関係者でな。」
奥からこつこつと床をならしながら国木田さんが出てきた。
タイミングが良かった。その声ではっと現実に引き戻されて、自分がなにをしに来たかを思い出した
「そうでしたか!それでは、僕は失礼しますね。」
愛想のいい爽やかな笑顔を残して、少年は去っていった。
初っ端からやばいな武装探偵社。
改めてこの会社の物騒さを目の当たりにして、自分の身を案じた。
「こちらだ。応接間へ案内する。」
そう言っててきぱきと歩き始めた国木田さん。
どうにも気になってしまったので質問を投げる。
「く、国木田さん……さっきの子、いくつですか?」
「さっきの、とは賢治のことか?あいつは14だ。」
さらっと言いのけた彼もまた、この会社の社員なのである。
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うたプリ大好き?(プロフ) - 更新楽しみにしています! (2020年2月8日 1時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - うたプリ大好き?さん» すみません……作者の怠惰です……3月になったらぼちぼち更新できると思いますので、しばしお待ちください…… (2020年2月8日 0時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (2020年2月7日 19時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - 闇川幽鬼さん» 初めまして、コメントありがとうございます。近頃なかなか更新ができておらず、申し訳ないです。頑張って完結させたいと思いますので、2人の運命の行く末を見守ってやってください。 (2019年6月24日 20時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - 黒バイさん» ありがとうございます。亀更新っていうかもうカタツムリ更新なこの作品ですが、完結したらラッキーぐらいの軽い気持ちで応援よろしくお願いします。 (2019年6月24日 20時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
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