運命 ページ9
次第にお客様が増えてきてせかせかと店内を回っていたら、勘定だ、と低い声が耳に届いた。
レジに向かってお客様から伝票を預かる。
その若草色の髪に、思わず胸がときめいた。
う、運命の人………!とその連れの変質者さん。
少し緊張しながら_____色んな意味で______慣れたレジ作業を進める。
伝票に並ぶ数字を打ち込み、お会計を済ませる。
レシートを両手でお渡しして、ありがとうございました、という台詞が口を衝きかけたときだった。
「この後、時間はあるか?」
まるで、なんでもないというように。今まで私に向かってその台詞を何度も言ってきたかのように、自然に発せられたその言葉に私はひどく動揺した。
たぶん、これがあの変質者さんだったら藤井さんに報告の後、バックヤード連行からの警察に通報コースだ。
だが、運命の人なら話は違う。これがきっと運命の人との運命の出会いなんだ……!
胸を高鳴らせて、しかし平静を装って、なんの御用でしょうか?と問う。
「俺たちは、武装探偵社の人間だ。お前の異能について話を聞きたい。」
胸ポケットから証明書らしい手帳型のケースを出して、こちらに示した。
武装探偵社。軍警の取り仕切る昼のヨコハマと、ポートマフィアが牛耳る夜のヨコハマ。相いれないこの二つの間を取り仕切る薄暮の武装集団。たしか中心の社員のほとんどが異能力者で形成されているはずだ。
そんな武装探偵社が、私に?私の異能って?
探偵社の名前が出てきた途端、話の流れが物騒になってきた。
「どういうことですか?私に異能?」
「関係がないのか、無自覚なのか…………おい、ターゲットはこの女性で間違い無いんだな?」
「もちろん。国木田くんをからかうのは楽しいけど、これはふざけていいような案件じゃないからね」
もしかして、この変質者も探偵社の人間?
あぁ、どんどん話が変な方向に進んでいく。
星座占いの嘘つき。運命の人には出会えたけど、かなり物騒なことに巻き込まれそうだ。
「……分かりました。とりあえず、業務が終わったら探偵社の方へ伺いますので、そこでお話を聞かせてください。」
そうは言ったものの目まぐるしすぎる一日の流れに、私はすでにだいぶ疲弊していた。
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うたプリ大好き?(プロフ) - 更新楽しみにしています! (2020年2月8日 1時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - うたプリ大好き?さん» すみません……作者の怠惰です……3月になったらぼちぼち更新できると思いますので、しばしお待ちください…… (2020年2月8日 0時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (2020年2月7日 19時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - 闇川幽鬼さん» 初めまして、コメントありがとうございます。近頃なかなか更新ができておらず、申し訳ないです。頑張って完結させたいと思いますので、2人の運命の行く末を見守ってやってください。 (2019年6月24日 20時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - 黒バイさん» ありがとうございます。亀更新っていうかもうカタツムリ更新なこの作品ですが、完結したらラッキーぐらいの軽い気持ちで応援よろしくお願いします。 (2019年6月24日 20時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
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