運命の恋？【文豪ストレイドッグス】

運命 ページ8

あれからいつも通りの調子を取り戻して業務を行っていた私に衝撃的すぎる出会いが訪れた。


あのベルの音とともに店内に入って来られたお客様にいらっしゃいませ、と声をかけながら案内へ向かう。

長身痩躯で、ぼさぼさした髪と腕に巻かれた包帯が印象的な男性だった。
とても整ったお顔立ちをされていたが、その放浪者のような風貌のせいであまり印象は良くなかった

その方はこちらを見透かすような視線をこちらに流してから、その場に跪いて私の手を自身の手に重ねた。

まるで童話に出てくる王子のような動作だったが、現実でこれをやるとただの変質者だ。
警戒すべきブラックリスト入りをこの店史上最速で果たした人だ。あとで藤井さんに報告しなくちゃ


「お会いして突然のお願いをお許しください。どうか、私と心中してくれないでしょうか。」


動揺。

後でじゃダメだ。今すぐに藤井さんを呼ばねば。完全にヤバい方を店内に入れてしまった。
警戒レベルがMAXにまで跳ね上がった。心中だって？馬鹿なことを言わないでほしい。寝言は寝て言え、というやつだ。初対面の異性に言うセリフじゃない。どう考えても。


「……ふ、藤井さん！今すぐ警察に連絡………！」

「おっとストーップ。いきなり失敬しました。さすがに動揺させてしまいましたね。
私は普通の客なので、悪しからず。連れが先に店へ来ているはずなので、失礼。」


…………絶対にあれを普通の客とは言わない。

連れ………お連れ様のいるお客様といえばさっきの「運命の人」ぐらいしか居なかったはずだ。


運命の人の連れに心中に誘われる………これも一種の運命というか縁なのだろうか。
わりと今すぐに切りたいような縁だが。


今日はなんだか、変な日だ。

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