探偵 ページ35
「………あんな国木田初めて見たよ。」
応接間の様子をこっそり覗いていた探偵達の反応は、個人差はあれど驚きに満ちていた。
女医の与謝野は付き合いが長い分、驚きも大きいようだ。
「ボクもあんな穏やかっテいうか柔らかな国木田さん初めて見ました……」
「あのお二人、知り合ってどのくらいでしたっけ?」
探偵社でも若手の二人が立て続けに口を開く。
入社以来厳しい国木田をずっと近くで見てきた谷崎は開いた口が塞がっていないし、こういう色恋沙汰に疎い賢治ですらも興味津々といった様子だ。
「あの喫茶に行ったのが初めましてだから………だいたい1ヶ月と少しってところかな。」
この中でも一番乗り気な太宰は口元がやけに緩んでいる。ちなみに、この応接間の覗きを提案したのももちろんこの男だ。
「そうとは思えないね。あの空気は熟練の夫婦……っていうか老夫婦の安定感だよ。」
スナック菓子を頬張りながら乱歩が呟く。
この事態はさすがの世界的名探偵でも驚く部分があるようだ。
ちなみに、Aが国木田に好意を寄せているのは社内全体の共通認識だし、国木田が異様にAを気にかけているのも周知の事実だ。話によれば、国木田はもうAに手を出しただとか、実はあの二人は昔からの許婚だとかあることないこと囁かれている。もちろんそんな噂を流したのはあの男である。しかし、それが信じられてしまっているのも、最近の国木田のAに対する態度によるものであるから、自業自得と言えなくもないのだ。
「1ヶ月であそこまで良い雰囲気になれるんですね……都会の人ってすごい!」
賢治がいつもの調子で感心する。
「それはさすがに違うと思うよ賢治くん……」
谷崎は苦笑しつつも、あながち間違いではないのかもしれないと思った。あの国木田をこんな短期間で虜にしてしまう人間がいたというのは、「すごいこと」に違いないのだ。
「それにしても、意外だねェ国木田はもっとお堅い美人がタイプだと思ってたが……あんなに若くて可愛らしい子だとはねェ……」
「それよりもボクは国木田さんの恋に落ちる速さに驚きました。
もっと慎重だと思ってました。」
「恋は盲目ってやつですか?」
「それに近いなにかを感じるよねぇ」
二人を見守る彼らの視線は、完全に近所のちょっと下世話なおばちゃんたちのそれで太宰に関してはゴシップ記者のようなほくそ笑み方をしている。
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うたプリ大好き?(プロフ) - 更新楽しみにしています! (2020年2月8日 1時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - うたプリ大好き?さん» すみません……作者の怠惰です……3月になったらぼちぼち更新できると思いますので、しばしお待ちください…… (2020年2月8日 0時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (2020年2月7日 19時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - 闇川幽鬼さん» 初めまして、コメントありがとうございます。近頃なかなか更新ができておらず、申し訳ないです。頑張って完結させたいと思いますので、2人の運命の行く末を見守ってやってください。 (2019年6月24日 20時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - 黒バイさん» ありがとうございます。亀更新っていうかもうカタツムリ更新なこの作品ですが、完結したらラッキーぐらいの軽い気持ちで応援よろしくお願いします。 (2019年6月24日 20時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
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