運命 ページ30
苦笑いを浮かべて困っていると、となりからすごい勢いの手刀が飛んできて変質者の頭にクリーンヒット。
うぎゃ、とかなんとか虫が潰れたような声を出して変質者は成敗された。
「すまない、この迷惑噴霧器のこれはもはや条件反射に近いものだ。許してやってほしい。」
「国木田くん……いくらなんでも全力すぎやしないかい?三途の川が見えかけたよ」
「良かったじゃないか。」
ひょこっとまた復活した迷惑噴霧器さんに、少し体が強張る。
それを察したのか国木田さんは迷惑噴霧器さんに言った。
「太宰、あまり依頼人を困らせるようなら俺が三途の川に送り返そうか?」
太宰と呼ばれた迷惑噴霧器さんは、眉尻を少し下げて困ったような、はたまた呆れたような表情をつくった。それでも顔は綺麗なままなので、少し不平等さを感じた。
「わかってるよ、国木田くん。私だって女性を困らせてしまうのは本望じゃないからね。あと国木田くんみたいな男に殺されるなんて、死んでもごめんだ。」
そして、迷惑噴霧器さんはこちらを向いて軽く微笑んだ。余裕のある、なんだか読めない顔だった。
「こんにちは、私は太宰。太宰治だ。この探偵社の社員で、民草の崇敬を一身に浴びるおとkおっ!!!」
「なにが民草の崇敬を一身に浴びる男だ、冗談も甚だしい。お前が浴びるのは女性からの冷たい視線だけだ!この唐変木!!」
ここまでの流れを見て感じたが、この太宰さんは変質者ではない。なんていうか、のらりくらりとしていて読めないし、たぶん喰えないタイプの人だ。さっきから冗談ばかり飛ばしているし、言葉の真意が読みづらい。
「花宮Aです。探偵社さんにはお世話になってます。」
国木田さんにヘッドロックをかけられている太宰さんにそう話しかけると、かなり苦しげな声で返事が返ってきた。正直なにを言っているかはわからなかった。国木田さんは結構本気でヘッドロックをかけているようだ。
ふとそこでなにかおかしいと、異変に気づいた。
たぶん癖になっていたのだろう。完全に無意識のうちに気づいていた。
太宰さんから赤い糸が見えない。
誰でも必ずどんな形であろうと糸は見えるのに、太宰さんからは見えない。一瞬、異能自体が消えたのかと自分や国木田さんの左手を確認したが、ちゃんと見える。
つまり、太宰さんだけ見えないのだ。赤い糸が。
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うたプリ大好き?(プロフ) - 更新楽しみにしています! (2020年2月8日 1時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - うたプリ大好き?さん» すみません……作者の怠惰です……3月になったらぼちぼち更新できると思いますので、しばしお待ちください…… (2020年2月8日 0時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (2020年2月7日 19時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - 闇川幽鬼さん» 初めまして、コメントありがとうございます。近頃なかなか更新ができておらず、申し訳ないです。頑張って完結させたいと思いますので、2人の運命の行く末を見守ってやってください。 (2019年6月24日 20時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - 黒バイさん» ありがとうございます。亀更新っていうかもうカタツムリ更新なこの作品ですが、完結したらラッキーぐらいの軽い気持ちで応援よろしくお願いします。 (2019年6月24日 20時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
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