運命 ページ22
いつも通りに店内と厨房を行き来する昼ごろ。
ドアベルがお客さんの来店を知らせてくれる。
笑顔でお客さんを迎えるべくドアへ歩いていくと、そこには運命の人が立っていた。
「国木田さん!いらっしゃいませ。」
「ああ。」
国木田さんを席へご案内して、ガラスのコップに入れたお冷やを置く。
「本日のオススメの紅茶はアールグレイとなっています。
疲労回復の効果が期待されていて、ミルクティーにするとまろやかな味わいで精神的な疲労にも効くとされています。」
「それでは、それをひとつ。」
「かしこまりました。」
注文を受けると、私はカウンターに入り棚から出しておいたアールグレイの茶葉を手に取る。
基本的に厨房は藤井さんが仕切っているが、紅茶を淹れるのは私の担当となっている。
お茶を淹れた人間の心情は、茶の味に影響する、というのは私の母の教えだ。
紅茶を淹れるときは、心を落ち着かせて相手のことを想って淹れる。
そうすれば、きっと相手は笑顔になってくれる。
母はいつもそう繰り返しながら私に紅茶を淹れてくれた。
本当に美味しい紅茶だった。茶葉は近所のスーパーで買ったなんの変哲もないものだったが、母が淹れると途端に格別に美味しくなるのだ。
まるで魔法のようだった。
そんな温かい気持ちで紅茶を注ぎ終えると、カップにソーサー、ミルクとスプーンのセットを小さなお盆に乗せて国木田さんの席まで運ぶ。
「お待たせいたしました。ご注文のアールグレイでございます。」
そうして紅茶を国木田さんの目の前に置くと、国木田さんは
「仕事はどうだ?」
と訪ねてきた。
「とっても楽しいですよ。店長の藤井さんもとても良い方なので、良い職場だと思います。」
「そうか、なら良かった。」
それだけ言って国木田さんはカップに口をつけた。
質問の意図が図りきれずに呆然とする。
しばらくすると国木田さんはカップをそっとソーサーに置き、顔を綻ばせていった。
「ここの紅茶は美味いな。」
その一言が嬉しくて、その一言のためだけに仕事をしている気にもなった。
「ありがとうございます!」
44人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うたプリ大好き?(プロフ) - 更新楽しみにしています! (2020年2月8日 1時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - うたプリ大好き?さん» すみません……作者の怠惰です……3月になったらぼちぼち更新できると思いますので、しばしお待ちください…… (2020年2月8日 0時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (2020年2月7日 19時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - 闇川幽鬼さん» 初めまして、コメントありがとうございます。近頃なかなか更新ができておらず、申し訳ないです。頑張って完結させたいと思いますので、2人の運命の行く末を見守ってやってください。 (2019年6月24日 20時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - 黒バイさん» ありがとうございます。亀更新っていうかもうカタツムリ更新なこの作品ですが、完結したらラッキーぐらいの軽い気持ちで応援よろしくお願いします。 (2019年6月24日 20時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ