運命 ページ17
ただいま、と言ってしまうのは母と暮らしていたときの癖か。
父が早くに他界して以来、女手ひとつで私を育ててくれた母はロマンチストで高校のとある日発現した私の異能を素敵ねぇ、と言ってくれた。
私は母が大好きだった。
品があって、物腰が柔らかくて、つよいひとだった。
寂しい、なぁ。
今でもたまにそう思うことがある。
ひとりの誰もいない部屋に帰ったときの空気の空々しさも
返ってこないただいまも。
全部が悲しくてたまらなくなるときがある。
そういうときは泣いていいんだよ、と諭す優しい母の声も今は悲しみを増長させる要素にすぎない。
「なんで、死んじゃったのよ…………お母さん。」
ひとしきり泣いたあとは、もう何もしたくないという脱力感が身を襲った。
夕飯は、食べなくていいか。食費が浮くし。
まだ濡れている腫れぼったい瞼をそっと閉じると、夢の中で母が待っていた。
『A』
『おかあさん!』
母は私の名前を一度だけ呼ぶと、くるりと背を向けて歩いていく。
『待ってよ、おかあさん。一緒にいこうよ。ねぇ!』
いくら必死に足を動かしても母との距離は縮まらない。
ただ母が離れていくだけだ。
『おかあさん、置いていかないで!私ひとりじゃまだ寂しいから!ねぇ!』
『おかあさん!!』
はっと目を反射的に開けると心配そうにこちらを覗き込む国木田さんがいた。
部屋の時計は7時を指している。
安否確認の時間だ。
「すみません、寝てしまってて」
はぁと重くため息をついた。
嫌な夢を見てしまったものだ。
無意識的に頰に当てていた手は少し濡れて、さっきまで自分が泣いていたことがうかがえる。
「いや、何事もないのなら良かった。返事が返ってこないので、心配した。」
「すみません」
と再度謝ると、国木田さんはさり気なく私の隣に座って私に向き合った。
「大丈夫か?」
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うたプリ大好き?(プロフ) - 更新楽しみにしています! (2020年2月8日 1時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - うたプリ大好き?さん» すみません……作者の怠惰です……3月になったらぼちぼち更新できると思いますので、しばしお待ちください…… (2020年2月8日 0時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (2020年2月7日 19時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - 闇川幽鬼さん» 初めまして、コメントありがとうございます。近頃なかなか更新ができておらず、申し訳ないです。頑張って完結させたいと思いますので、2人の運命の行く末を見守ってやってください。 (2019年6月24日 20時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - 黒バイさん» ありがとうございます。亀更新っていうかもうカタツムリ更新なこの作品ですが、完結したらラッキーぐらいの軽い気持ちで応援よろしくお願いします。 (2019年6月24日 20時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
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