運命 ページ11
「じゅ、14って、親御さんは……?」
「あいつの両親は田舎だ。………それ以上は、気にするな。」
たしかにこれ以上気苦労を増やしたくなかったので、気にしないことにした。
そうだ、それがいい。
事務所の隅の方にある応接間は、パーテーションで区切られているだけの一角でソファとテーブルだけが置いてある良い言い方をしたらスッキリしたスペースだった。
そこに国木田さんと向かい合うようにして座る。
淡々とした口調で、それでは、と国木田さんが話を切り出した。
「まずは、ひとつ貴女に聞きたいことがある。」
ごくり、と唾が喉を通る。
無意識のうちに息が止まっていたようで、少し息苦しい。
軽く深呼吸して続く彼の言葉を待つ。
「貴女に、運命は見えるか?」
運命。その言葉が彼の口から出て、少し驚いた。
当然のようにこの事務所にも通る幾筋もの赤い糸。人と人との関わりを、運命を繋ぐ赤い糸。
私にだけ見えるはずの人々の縁。
なぜそれを知っているのか。国木田さんが。
そんなことを考える前に反射的に返事が口を衝く。
「見えます!」
意図せずに出たそのセリフに、彼は驚くでもなくかえって満足気に目を伏せた。
その仕草に不謹慎ながらも綺麗な顔立ちをしてると思ってしまった。
「……そうか。
貴女は、とある事件に関与している可能性が非常に高い。
被害を受ける前に見つけられて良かった。」
それからその事件のことを国木田さんは話してくれた。
まず前提として、私のこの赤い糸が見える力は異能力と呼ばれる特異のひとつであること。
事件の犯人たちは運命が見える異能力者を探しているということ。
その異能力者は私のことで、直ちに保護を受ける必要があること。
「………なんとなくは、分かりました。
奇異な術を使う人間が、少なからずいるということは、母からも聞いたりしていましたが……
まさかこれもそうだったなんて……」
空に手を伸ばして、指に糸を絡める。くるくると指を回していじっていると、国木田さんは少し不思議そうにこちらを見つめていた。
そうか、国木田さんにこの糸は見えないのか。きっと彼には今私が空中に円を描いて遊んでいるようにしか見えていないのだろう。
「えっと、運命が見えるって一概に言いますけど、私は運命……まぁ平たく表現するとご縁ですね。
それで結ばれた人同士に繋がる赤い糸が見えるんです。」
44人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うたプリ大好き?(プロフ) - 更新楽しみにしています! (2020年2月8日 1時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - うたプリ大好き?さん» すみません……作者の怠惰です……3月になったらぼちぼち更新できると思いますので、しばしお待ちください…… (2020年2月8日 0時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (2020年2月7日 19時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - 闇川幽鬼さん» 初めまして、コメントありがとうございます。近頃なかなか更新ができておらず、申し訳ないです。頑張って完結させたいと思いますので、2人の運命の行く末を見守ってやってください。 (2019年6月24日 20時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
朝霞(プロフ) - 黒バイさん» ありがとうございます。亀更新っていうかもうカタツムリ更新なこの作品ですが、完結したらラッキーぐらいの軽い気持ちで応援よろしくお願いします。 (2019年6月24日 20時) (レス) id: 4b1c679789 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ