ものくろとーん【新門紅丸】 (ページ4)

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「in.father?」

『…………っ。』

ぺたんと汚れた床に座る。
…腰が抜けたらしい、もう力が抜けきった。

足の痛みも、周りの灰も。
目の前で消えたあなたも。
1週間でぼろぼろになった家も。

涙が頬を伝った。

新門さんが居るのに、大泣きした。
声は出さなかった…出なかった。

せめてぐしゃぐしゃになった顔だけは
見られたくないので、少し俯き気味に顔を下に向ける。

もう泣いたってバレてるけど。

「………………………。」

立つ気力すらない私を見てから、
新門さんは無表情で私の方へ足を進める。

そろそろ床板が濡れ湿った頃、
新門さんは強引に私の手を取る。

背の低い私は新門さんを見上げて。

…こんな顔見られたくないだとか、
そんな事すら考える余裕はなくなった。

もうおばあちゃんはいないんだ。

その事で頭は埋まってて。
けれど可笑しいくらい冷静で、
顔はないてぐちゃぐちゃ。もうやだぁ…。

もうどうでもよくなっていた時。
腕に力が籠ってすぐ、耳元で声がした。

「………………泣け。」

『え、………。』

気づけば私は立っていた。
新門さんに抱きしめられて、抱き合っていた。

私のお父さんも焔ビト化した。
それは小さい頃だから覚えてないけど。

懐かしいってこんな気持ちなのかな。
聞いたことないはずだ、初対面のハズ。
聞いたことがあるような、なじみのある声。

『っう……、うあぁ……っ…！』

20になっても泣けるらしい。
ストッパーが外され声を上げて泣いた。

その間も新門さんは背中に手を回していてくれて。
大きくて暖かいその手は私を泣かすには十分だった。
嗚咽を上げて泣く私をずっと抱きしめてくれた。

何分か経った。

1時間かもしれないし、数十分かもしれない。
短い様な長い時間が過ぎた。

涙はやっと枯れて、
私の気持ちもだいぶ落ち着いた。…らしい。

お礼を言いたくて、下がろうとする。
その時に、やっと腕を掴まれていたことに気づく。

口を開こうと少し新門さんと距離が開いたとき、

「…………行くぞ。」

『えっ、あっ…、』

新門さんは、顔を見ないまま私の腕を引いて、
そのまま外に出てずんずんと夜の通りを歩いて行った。